投稿日: Sep 19, 2011 12:4:45 AM
新たな漫画文化は生まれるのかと思う方へ
韓国のメディア研究者のプレゼンで、韓国におけるマンガの制作および利用の世代の移り変わりに関する話を聞いた。第1世代は紙の漫画本の時代で、本そのものの売り上げと、付随したキャラクタや、シナリオのライセンスなどのビジネスがある。第2世代はPC時代で、読者が紙のマンガを自炊してPDF化しシェアする。これでマンガfanのコミュニティ活動が起こる。参加意識をもったり再加工、再配布をする楽しみが出る。これはちょうど日本のコミケの初期のような感じである。出版社や作家に還元はされないけれども、マンガの世界に下からのオタク的な「ある」盛り上がりが出てくる。
第3世代はWebの時代で、Flashとかソフトウェアを使って漫画を面白く見せるようにもできる。配布もネットで行えるのでコストはかからずリアルタイムに行える。こういったものが広告ビジネスと結びついているようだ。またWeb以外にいろんな電子メディアに展開ができ、最初からマルチメディアを想定した作りになっていく。日本ではなかなか漫画が広告ビジネスとして成立しないのは、紙の漫画本体のビジネスが低落していったように、金のない若い人対象に広告を出すところがあまりないからだろう。その辺は韓国とか東南アジアの方が漫画読者層がリッチなのかもしれない。
第4世代はスマホ・タブレットの時代で、インタフェースがタッチ動作になるとか、ARを織り交ぜるとか、3DCGを製作技術に使うなど、紙とは全く異なるベースの漫画表現となり、テーマ・キャラクタ・構成の面でのみ漫画の伝統を引き継いでいることになる。合わせてYouTubeのようなソーシャルメディア要素やそこでの広告、加えてEC・アフィリエイトなど、ビジネスモデルはネット上の今日的なものに漫画コンテンツを置くような感じである。今そこに差しかかっているという話だったが、マルチメディア的な漫画表現の斬新さが話題になるのは一時的なものでしかないだろう。むしろこういった土壌で新たな漫画領域が出てくることに注目すべきだ。
紙の漫画の垣根が崩れることは、漫画の側から例えばマルチリンガルに発展させてネット配信するとか、逆に今まで漫画的グラフィックスを使っていなかったところに漫画を持ち込むことがある。外国語教材にはスキット(寸劇)がつきものだがここに既存の漫画を使うとか、漫画家に漫画本以外の制作を頼むことが起こりつつある。しかし紙の漫画の大先生は従来の表現方法以外は好まないであろう。だから今の人気漫画が他領域にマルチ展開するのは、既存のアニメやキャラクタビジネスなどと同じビッグビジネスとしてはあるだろうが、それ以外のところは過去の漫画をデジタルで使いまわしできるようにするとか、コミケのようなまだデビューしていない若手が活躍するところとなるだろう。
韓国の第4世代のサンプルを見せてもらったが、やはり従来の日本のマンガ出版よりも、コミケの方が韓国にも影響力を持つように変化しつつあるように感じた。日本ではニコ動ですでにコミケ的な作品が人気を得ているように、デジタルとネットの時代が新たな作家を登場させるのだろう。