投稿日: Dec 01, 2011 12:30:36 AM
若手育成を考える方へ
清水メディア戦略研究所のIT Biz Social Net - BUSINESS HINT! (119回)では、菊池寛の孫で文芸春秋で文芸誌の編集をされていた菊池夏樹氏が、月刊の文芸電子雑誌allez!(アレ)のコンセプトを話した。紙の文芸雑誌がそうであったように、まだ世間に知られていない若い作家に作品発表の機会を与える場所が必要であるという。2011年9月創刊で、まだ雑誌スタイルとしては試行錯誤が続いていて、有名作家や中堅作家も含めていろいろな特集形式で編集されているが、必ず無名の人たちにも書下ろしをさせている。こういう編集者が目をかけている作家が10年目くらいで文芸の何々賞をとって、その後10年くらい脂の乗った活動をして、その後の活動は余韻になるというのが典型らしい。
コンテンツのクリエータ達の登竜門はいろいろ必要だが、従来の文芸ファンが電子書籍hontoサイトをたむろしているのかどうかは知らない。作品と読者の出会いの場として紙媒体の機能が低下してしまった今、単に電子書籍化すればよいものではなく、出会いの場のプロデュースも新しくチャレンジするテーマだろう。記事『ソーシャルメディアは出版を救うか』では、朝日新聞のブック・アサヒ・コム BOOK asahi.com のことを書いたが、ネットとデジタルだから可能なマーケティングにもっと力を入れる必要を感じる。しかし商業出版だけが頑張ってもクリエータを育てられる時代ではなくなったと思える。
デジタルコンテンツでも音楽の場合はYouTubeに代表されるソーシャルメディアへの露出がダウンロード販売に結びつき、レコード・CDが売れなくても、ライブ収入が増えるという流れが出てきて、音楽での金の流れはメディア登場以前の状態に回帰するようにも見える。それではライブのような収入がない文芸などのテキストコンテンツの場合はどうなるのだろうか? 文芸電子雑誌allez!の場合は、原稿用紙何十枚のショートコンテンツを書かせているが、自主制作や同人誌という従来のスタイルとも共通するのがお金が回らないことなのだから、別の道を考えなければならない。
日本はアメリカなどに比べてライターのマーケットというかオープンな仕事の依頼の場所が少ない。アメリカはWebでの投稿が盛んであると同時に、WebやBlogでのレビュー、レポート、コラム、エンタメなどあらゆる分野のライター募集がある。だいたい何千円から1~2万なので、バイト代に近いが、コツコツやっていると食えるのかもしれない。大ヒットもしドラのきっかけがBlogであったように、電子雑誌allez!など作品発表の前段階として、Web・Blogといった日常的なメディアで外部のライターを使って充実したサイトを作るとかメルマガを出すという活動が必要なのだろう。面白味のない企業サイトやメルマガをそのままにしてソーシャルメディアに期待をかけるよりも、企業でも官庁でも学校でも、テキストコンテンツの充実をしていけば、話題性も高められるし、ライターも育つという循環になるのではないか。