投稿日: Mar 18, 2014 12:21:26 AM
急がば廻れ
マレーシア航空の飛行機が行方不明になって1週間以上が経ったが、依然手掛かりがない。衛星写真などをみんなで調べて見つけようとするクラウドソーシングの方法もとられているが、先週の段階で200万人が参加して海上に何か浮かんでいると思われるポイントに何十万ものタグがつけられた。さてこの先、そんなにたくさんついたタグから作業をどのように進めるというのだろうか?
ボストンマラソンの爆弾犯探しの時にはクラウドソーシングは効果があって、何日もしないうちに怪しい人は絞られて、犯人は突き止められた。警察がクラウドソーシングを活用したのかどうかは定かではないが、世間では大いに盛り上がったものだった。しかしその途上では犯人ではないのに「不審者」扱いされた一般人も多くいたことを考えると、こういう場合のクラウドソーシングに課題がないとはいえない。
論文の評価もクラウドソーシング的な方法がとられるようになるだろうということを、記事『変化する論文周りのリテラシー』で書いたが、そういうことが円滑に進むには、やじ馬とかノイズの発生源になるような人たちが関与しない環境を築いておく必要がある。論文の場合は学会のようなコミュニティが先にあるので、そこでの限定的なクラウドソーシングができるであろう。
それに類した専門分野とか趣味の世界も、すでにコミュニティがある場合はクラウドソーシングの威力が発揮される場合がある。2000年頃だったが、ドイツで ”Rhythm and Blues Goes to Rock'n'Roll” みたいなタイトルのCDのボックスセットが出たことがあった。これは上下それぞれ15CDがあり計30CDで450曲ほど入っているコンピレーションなのだが、解説のブックレットがなく、元のレコードがなんであるのかわからなかった。そこでマニア達が調べた結果をネットで共有し合うようなことがヨーロッパのマニア中心に2か所以上で行われ、1年ほどで殆どのレコードが突き止められた。
このコンピの元レコード探索の場合は、元レコードの発売された時代が1940年代から1960年代という昔であって、ネットはおろか紙の音楽メディアも大規模な商業音楽以外は殆ど発達していなかったので、アナログ文献でさえ足りない状態であった。つまり現物である昔のレコードに直接あたって調べるという方法を多くの人が行っていた。
音楽分野ではBBS(掲示板)の時代からこういう活動をするグループがあったので、それがネットで一挙に世界的に情報共有するものに変わっていった。そういう活動の先にWikipediaもあり、音楽に関してはWkipediaが集大成のようになって充実している。同じアーチストに関してWikipedia を見ても、日本語と英語では情報量の圧倒的な差に驚くだろう。クラウドソーシングは元々は専門分野のものであるともいえる。
マニア的な音楽に関しては1970年代はあまたの雑誌が創刊されていたが、やはり雑誌は大衆音楽でしか生き残れなかったようだ。しかしいくらネットに豊富に情報があっても、それは検索で掲示板の書き込みを探すような調べ物には都合がよくても、雑誌のような娯楽性はもっていないのだが…。
今クラウドソーシングが匿名の人々の参画をも可能にしているように見えるが、少し突っ込んで考えると解決すべきテーマはいろいろある。不明航空機さがしなどは素人のクラウドソーシングと専門家のクラウドソーシングの連携というものを考える必要があるが、まだどのようなものがよいのかわからないだろう。災害時もまだそのような状態である。それよりもすでに人々が集まっているところからネットでのクラウド型のコラボレーションをする方が着実に進むのではないだろうか?