投稿日: Jan 04, 2012 1:7:14 AM
Amazonの揺さぶりの真意は何かと思う方へ
2011年中にKindleの日本語版がでるという日経の報道があって、各出版社の対応がいろいろささやかれたが、年末になって来春に繰り延べられたことが明らかになった。AmazonのKindleを巡っては日本の出版社の人が契約条件が「とんでもない」と書いていたことがあったが、それはそうだろう。Amazonは日本の出版社の紙の本の流通もしていて、それはそれで商売になっているのだから、電子書籍は別のビジネスの位置づけになっている。Amazonが紙の本の将来をどう考えているのかは知らないが、少なくとも電子書籍のビジネスを伸ばす上では、紙の本の置き換えではAmazonにとってもカンニバリズムなので、新たな電子出版社の台頭を期待していると思える。つまり既存出版社の利益を守る電子書籍という考えはないと思う。
だから特に大手出版社の立場を尊重した契約条件にならないので、冒頭のような反応が出たのであろう。しかし一方でAmazonのKindleを支持するところも多くある。ebook2forumの アマゾンは出版社の敵か味方か:もう一つの見方でも紹介されているが、 小出版社、特に駆け出しの出版社や、著者の自主出版にとっては、AmazonKindleの仕組みがあることで、大変効率的に仕事が進められるというか、出版のコアだけを自分達がやっていれば、ECの部分は何も考えなくてもよいようになっているので、出版ビジネスへの参入が容易になる。その代わり、Amazonが権利の一部に食い込んでくるとかには目をつぶらざるを得ない。日本でも出版社の社長で考え方の変わってきた人は居て、それで冒頭のニュースのようなことが起こったと思う。
要するに既存の出版ビジネスのステータスや利権を一歩も譲らないというスタンスでAmazonKindleと付き合うのは難しいだろうし、むしろAmazonと一緒に新しいモデルを開拓しようとビジョンを作ってから、「Amazonを利用してやろう」くらいの意気込みでAmazonの戸をたたくように考えるべきだろう。Amazonは既存のコンテンツホルダに対して、コンテンツをデジタルにするとどのようなサービス展開が可能になるか、というような紙の出版モデルを超えるチャレンジを期待していると思う。これは日本の既存の出版社が最も不得意な点だからAmazonと組みたくないことになる。
Amazonの競合電子書籍ビジネスはみな、既存のコンテンツホルダの意向をAmazonよりもよく理解していますという姿勢で受け皿を提供しようとしている。このことはAmazonは折込済みであろうと思うので、こういう競合でAmazonはポリシーを曲げないとすると、Amazonは既存出版社の中のチャレンジャーと組むことと、小出版用プラットフォームの提供の両面作戦をとっていると考えられる。Amazonはコンテンツもデバイスも直接たいした投資はしていない。Kindleもアリモノ技術の寄せ集めでそんなに開発費はかかっているとは思えない。それよりも遥かに多額な投資をデータセンタ・クラウドの方にかけているので、今見えている電子書籍配信ビジネスの一歩先の算段はあるのだろう。それが姿を現すまでは競合の電子書籍ビジネスはそれなりに花開くと思う。