投稿日: Feb 17, 2015 12:59:44 AM
写真植字というものができるまでは、印刷の文字のサイズは号数とかポイントという規格で「とびとび」に大きさの決まったものしかなかったのが、写真植字になって文字のサイズは任意にできて、また縦長・横長・傾斜の変形もできるようになった。文字を並べる方向も斜めにできるようになった。初期の写真植字は海図の文字打ちに使われた。しかし実際に多くの印刷物に於いて、任意の文字サイズとか文字変形のニーズは殆どなかった。
活字のサイズは小から大まであるにしても、リニアにスケーリングするのではなく、初期の段階からある段階で一挙に大きくなるようになっているのは、数値的にはなぜだかわからなくても、実際に見出しの効果を考えるとだいたい納得できるものであった。これは洋の東西を問わずに共通している。
つまり文字サイズは等差的な並びにはならずに、何らかの等比的な並びで使われてきた。これはどのような数列が良いかは諸説あるが、おそらくどうでもよい。原則がどうであっても、紙面をデザインする毎に視覚的にベストが選ばれるのだから。
視覚でも聴覚でも人の感覚で捉えるものは皆等比的な扱われ方はしない。音楽を聞きながらボリュームをまわして大きさを調整する時には、人が音の大きさが倍になったと思う時は電気エネルギーとしては10倍になる。大見出し文字の大きさは本文の10~20倍の面積になる。
出版物の場合は判型があらかじめ何通りしかないので、本文や見出しの諸サイズはパターン化できるのだが、商業印刷とかポスター・POPなど販促物の場合は、実際にそれが使われる場所を想定しないと、デザインできないことになる。とはいってもいちいち実際にはやってられないので、デザイナの勘と経験になるのだろうが、デジタルサイネージでも、大判プリンタでも、いろいろ試行錯誤ができるようになってきたと思う。
特にヨーロッパの屋外広告やバスのラッピングなどの大判プリンタの応用を見ていると、タイポグラフィーにとっても新分野が出てきたようにも思える。
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