投稿日: May 24, 2014 12:49:45 AM
時代は逆戻りしない
昨日ホテルの再建の話を聞いた。 バブルの頃に豪華なホテルが各地にできて、バブル崩壊後に多くのホテルが借入金が返せなくなり、値段が下がるとか倒産・閉鎖するとか、外資に買われていった。その中で生き残り黒字化したホテルの話であった。その中で日本のホテル経営の変遷が語られたのだが、バブルよりもホテルに大きな打撃を与えたのがインターネットであるという話で、それはいろいろ思い出すところがある。
当時不況でリストラを迫られていた日立造船が、社内でベンチャーをやらせて、自分たちの食い扶持を自分で確保しろということをやった。その時、確か子会社のシステムの人だったと記憶するが、小野田さんが「旅の窓口」というホテル予約などのサイトを始めた。これは今考えると何でもないもののように思えるが、アメリカの何かをマネしたものではなく、国内のビジネスをいろいろ調べてたどりついたものであることを小野田さんから聞いた。
取引慣行が不明朗なものはEC化はできず、例えば航空運賃は当時扱えず、ホテル宿泊とのセットのような特殊な扱いになった。運送も不明朗でEC化できないと判断したと聞いた。当時印刷のEC化も研究していたので参考になった話である。
「旅の窓口」は大成功して、しかも今すぐ安く泊まれるところを見つけたい客と、値段を下げても空部屋をぎりぎりまで売り切りたいホテル側の双方がWinWinになった。それまでは旅行代理店の窓口が閉まってしまった以降は、時刻表の広告を頼りに電話を順番にかけないと、行く先のホテルは探せなかったからであった。
これはホテルが細かく価格比較されるきっかけでもあり、既存のホテルの値段も下げただろうが、それ以上にホテル経営が見直されることになった。それまでも素泊まりのビジネスホテルは駅周辺にあったが、それらはすぐに見つかる立地であるか時刻表や駅に広告を打たなければならなかった。それがインターネットで検索・比較されることで、多くの宿泊需要をかっさらっていき、その頃から新規のビジネスホテルチェーンが増え、アパホテルだけでも全国に200以上あるほどになった。
リアルの世界の高級ホテルはショッピングセンターやオフィスビルを併設するなどしてリスクヘッジし、またサービス価値をあげなければ成り立たないようになっていった。
一方でECなどのマッチングサービスはいろいろな分野に広がっていった。旅では旅行代理店の役割が変わってしまったように、エンタメもシティロードやぴあのような情報誌やチケット販売はインターネットに移っていったし、オフィス用品から惣菜まで物品調達もネット利用があたりまえになり、効率の悪いルートセールスは減った。
しかし誰でもECに参入すれば食っていける時代ではない。「旅の窓口」がビジネスモデルを構築していた時代は、例えば東芝は駅探をするために全国の時刻表を入力し、実際の乗り換えにかかる徒歩時間をアルバイトを使って調べさせ、独自のモデルを作っていたし、ゼンリンの地図・カーナビ情報などもそうで、独自の土台を自分で築いたところが後にシェアを取れるようになったのである。
これはネットを使った効率化の裏には、他人の苦労を肩代わりする大きな努力があるということでもある。ECも成功すればいろいろ揶揄されることもあろうが、ならば代わりにやってみろといわれても、誰にも真似できないものになって、既存の業界を揺さぶるところまで行くのである。