投稿日: Jan 12, 2011 10:40:47 PM
書店は自動販売機ではないと思う方へ
久しぶりに江古田駅の周りを歩いたら、昔と様子が変わって古本屋がほとんど無くなっていた。しかしBookOffができていて、置いてある本は江古田を思い起こさせるようなものだったので、一安心であった。BookOffにはいつも客がいて、価格も古本屋よりも安いだろうと思われるものがある。新本の店に比べると魅力のある本は少ないはずなのに、古本屋には独特のテイストがあって、それが人々に立ち寄る理由になっているのだろう。消えた古本屋の在庫もこちらに移ったのかもしれない。古本屋の経営が成り立たないのにBookOffが成り立つというのは、それなりのニーズがあるわけだから、古本屋という業態を変えなければならないということだ。
この本屋の経営の肝をネット上でどう実現するかというのが電子書籍の課題の一つだ。アメリカではKindleの登場の頃から競合会社が読書端末の発売とともにオンライン書店を立ち上げたが、今の日本がそのような時期にさしかかっている。どこそこのオンライン書店は1万点、というようなニュースもあるが、閑古鳥の鳴く書店にだってそれくらいはあるだろうし、だいたい本屋に立ち寄る客がその店に何点あるかなどを気にかけるはずがないので、あまりアピールはしないだろう。客を立ち寄らせる訴求点を曖昧にして、員数合わせのように点数を増やすよりも、強いコンセプトを作るほうが重要なはずだ。
記事『自分の未来図を描いてみる』では青空文庫の着実な歩みに触れたが、青空文庫の1万点は過去の名作文学が中心で、それに対してプロジェクト杉田玄白は、海外の著作権切れのものを訳したい人が勝手に訳して公開するものである。このような切り口とかテイストこそが人を振り向かせる一つのきっかけで、オンライン書店も「ページの束」を売りますというのでは、あまりにも雑な気がする。
よくいわれるように書店にカリスマ店員が居て、上手なお勧めをすると売れるし、訪れる客にとっとも面白い店となる。つまりコンシェルジュが重要だと繰り返し言われている中で、この無味無臭のオンライン書店を立ち上げる神経はいかがなものか? オンライン書店の成功は、本にまとわりつくいろいろな情報をアレンジして、リアルな本屋よりも面白い場にすることだろう。作家、文化人、編集者、学識経験者などで書評を書いている人はいくらでもいるし、それらのお勧め情報を提供する方法はいくらでもあるのに、出版社のウリ文句だけしかWebに並んでいないオンライン書店もあり、全然人いきれが感じられない。マーケティングから考えても無味無臭のオンライン書店はどのような顧客を想定しているのか分かりにくいサイトがあるのは不思議だ。