投稿日: Jul 04, 2015 1:22:11 AM
2015年の電子出版EXPOは規模が風前の灯のようになってしまったのだが、これはゾーニングの問題もあるようで、従来は電子出版EXPOに出ていたところが、他のゾーンに移って、離れた場所で展示しているケースが多くなっている。これは電子出版・電子書籍とは何だったのかを考えるうえで非常に重要なことである。これらの言葉には求心力が無いことをあらわしているのだが、それはビジネスにおける価値の生まれるところをどう見ているのかということでもある。
出品者のある会社は配信というところで価値を発揮しようとしている。ある会社は組版とか表示に価値を、ある会社はコンテンツ管理に価値を、ある会社は関連サービスのシナジーに価値を、権利処理に価値を…という具合なので、自社の価値に関連深いゾーンに行ったのだろう。
これは出版というビジネスの成功は、これら諸々の価値の掛け算で成り立っていて、その総体つまり出版経営をIT視点で見直そうというコンセプトがあったならば、ひとつのゾーンにこれらを集めることはできるかもしれない。
結局この間の電子書籍にまつわるナンジャカンジャも、経営の根幹にデジタルメディアを据えていないから、議論はしても何もできないで無駄に時間を過ごしてしまったきらいがある。他社の動向を見ていて、儲かりそうなら首を突っ込もうという姿勢で、自分の頭でデジタルメディアの戦略を考えていないことでもある。このまま右に習えでいけば、KADOKAWAの動向次第で日本のデジタルメディアが決まるということになるかもしれない。
日本の電子書店の閉鎖が続く中で、漫画の投稿サイトはCOMICOの1000万を筆頭に、アプリダウンロードが100万規模に育ったところも出てきて、ネットでの流通革命が近いうちにあるであろうという機運がある。今は無料サイトなので出版社は大したメリットは無く、これから手を引くかもしれないが、例えそうであってもネットでユーザーが100万から1000万いるなら、出版以外の誰かがそこに商機をみつけようと努力するだろう。
このEXPOはコンセプトにデジタル環境で生き残ろうというメッセージ性が感じられなくなったイベントといえる。
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