投稿日: Oct 28, 2014 12:53:6 AM
文字校正者を派遣する会社を利用している人から、校正派遣はいいビジネスではないかと思う、という話を聞いた。昔は大学出の若い人が編集に携わりたくて、働きながらエディタースクールなどに通って、出版社に就職することがあったし、編集者の求人もエディタースクールなどに出していた。また新人で採用した編集担当の教育に、夜間エディタスクールに通わせるようなこともしていた。ところがエディタのなり手も求人も減ってしまって、エディタスクールがどうなってしまったのかと思ったら、校正のニーズが高まったということを何年前かから聞いていた。そして就職先は必ずしも出版社ではないということだった。
記事『メディアビジネスの縮小』では、写植・製版などがDTP化したことで、日本の印刷と関連産業の売り上げが年間4兆円くらい減ったことを書いたが、これは同時に編集者の負担も減らしていた。いや増やしていた場合もあった。それは同じ理由からくる。DTP以前は印刷発注のための指定の仕方を学ぶのが大変で、エディタスクールの教える内容でも「指定」の実践にかなりの比重があった。しかし編集済のテキストや画像のファイルをそのままわたして印刷発注するとか、あるいは編集者が自分でDTP制作をするようになって、編集業務から作業指示の要素は大きく減っていった。
そのおかげで制作原価は下がって、初版少部数だけの新刊でも乱発できるようになった。事実年間の発行点数は増え続けた。
このような、編集済テキストと画像をレイアウトすればメディアは完成だ!的な出版態度はそのままWebの世界で拡張していったと思える。しかしそれでは済まない世界もあるわけで、だから冒頭の校正者のニーズがある。
よくWebの面白画像などで店舗のPOPなどの誤植の例が挙げられるが、売り場などの現場に校正までしろというのは無理がある。一方でサーバーには商品情報がデータベース化されているとか、ネットで検索すれば関連情報・同業者情報がひっかかってくる。つまり情報は多いけれどもハンドリングする人が足りない状態になっていて、商品情報を扱う一般企業でもメディアマネージャーと専門スタッフを組織化しなければ切り抜けられないだろう。
しかし企業がメディアを扱う部署の組織化を容易にできるわけではないのでBPO(アウトソーシング)とかによる支援が必要になる。販促物の場合は広告代理店が企画とかアートワークをするにしても、例えばチラシの文字校正をしてくれるわけではない。情報誌でもデータベースから一挙に何百ページをレイアウトすることは可能だが、校正の問題が残る。当然ながらデータベース段階で正しいデータにしておくわけだが、それでも配置する場所を間違える可能性があるので、人による校正をなくすることはできない。こういったことは紙の出版物やカタログだけでなく、Webカタログなどにも共通する。
だから従来の原稿用紙とゲラを見比べる校正作業よりは範囲の広い業務になるのだが、BPO業務になるだろうし、このような担い手が企業から見つけやすくなると、記事『メディアビジネスの縮小』で書いた企業や団体も自主出版活動も盛んになるだろう。
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