投稿日: Sep 02, 2015 1:53:14 AM
東京オリンピックのエンブレムを白紙に戻すそうだが、原案のイマジネーションを作る人と、複製用のマスターを作る人は分けた方がよいかもしれない。アートとクラフトの分離である。今のデザイン事務所はPhotoshopなどを縦横に使えるようになったので、コラージュもれレベルがどんどん上がったわけだが、本来のデザインからするとphotoshopは必須ではないわけで、カンプにしろパースにしろ昔は手描きで行っていて十分であった。デザインコンペもそういったアナログな段階で行えば、たとえ悪意でコピペするのではなくても偶然似てしまうことも大分緩和されるのではないかと思う。
コンペはカンプで行って、それを通った作品をデジタルイメージするのは、昔でいえば「製版」になる。デザインを考える人が描画や写真の素材を用意して、それを紙面なり画面に配置する別のプロフェッショナルに持ち込んで「ポストプレス」をしてもらうと、ネットの画像をそのまま持ち込むこともやりにくくなるし、やはり似てしまうことは緩和されるだろう。
つまりデザイナ側のクリエータの仕事としては、コンセプト、カンプ、素材を自分で用意することで、仕上げはクライアントの意向も入れながら校正しつつ行うような方法である。
東京オリンピックの場合は、原案に似ているものが先にあったし、完成品に似ているものもベルギーにあったわけだが、「似ている」問題は未来永劫続くものだと思われるので、クリエータは似ていてもオリジナルであると宣言する意味で、開発過程を明らかにする必要があるだろう。コンセプトはテーマが決まれば多くの人が同じ様なこと考えるので、完全にユニークにはし難い。むしろ素材がユニークであればコンセプトが同じでもビジュアルは異なってくる。
クライアントとしてもいつもユニークな作品を望んでいるわけではなく、何々と似た雰囲気を求める場合は少なくないから、他にどんな似た作品があって、それとどう違うのかもコンペで問題にした方がいいだろう。
要するに、デザインコンペの手順を変えなければならなくなっているということだ。それはGoogleの画像検索が素人でも自由自在に使えるような世の中になったからである。だからプロとしては素人の先回りをするくらい画像検索を使いこなす必要があって、同時にデザインの審査をする方も、知的財産権の法務を担当する人も、同様のスキルを必要とされているともいえる。
実際には世界中の画像検索をしながらオリジナルな作品作りをするというのも滑稽な話なので、そうなると最初はやはりアナログがよいように思う。