投稿日: Apr 20, 2015 1:49:54 AM
1980年頃からのニューメディアを見てきて感じることは、1960年代のテレビに爆発的な普及とは対照的に、非常にスケールの小さいビジネスになってしまうために、既存マスメディアは本気でデジタルメディアには取り組まないなあ、ということだった。
技術の進歩という文明の変化速度と、文化の緩やかな変化は同期しないことが、メディア事業を時代に合わせて模様替えしていくことを難しくしている。新しい技術で素敵なメディアビジネスができるように思っても、新メディアの認知とか利用習慣を獲得するには何年も要して、なかなかベンチャー企業の手におえるものではないことになってしまう。しかもマスメディアが取り組まないとなっては、誰がメディアの革新の担い手になるのだろうかと思った。
今日ではネット利用者がマスメディア並に多くなってきたので、既存メディアも重い腰を上げつつあると思うのだが、電子書籍に見られるようにまだ本気度は低いのは、やはり出版とかメディアという文化産業は、技術革新にシンクロし難い様相があるからだろう。
しかし他業界を見ると文化的なビジネスであっても技術にシンクロした例はいくつもある。写真撮影がデジタルカメラに変わったのはゼロ年代前半であったし、記事『コンテンツの海外ビジネス』で書いた、AVも2005年前後にオンライン・ファーストのビジネスが立ちあがっている。
カメラの方はケータイ時代のエロカワ写真集という有料コンテンツになった。でもよく考えるとそういったビジネスの主体は既存の出版社では無かったり、また制作サイドだけがデジタル化のメリットを享受していて、既存メディア企業のデジタル化の助走にはなっていなかった。
ビジネス文書はとっくの昔にデジタル化してしまっているのだが、それはオフィス環境が前世紀末に急速にデジタル化ネット化したからである。そこから考えると、カメラとかビデオ以外のクリエイト環境がデジタルにならなければ、トータルなデジタル出版が機能しないともいえるだろう。
漫画の制作環境では2次元の画像から3次元のモデルを作るとか、3次元のモデルから2次元のキャラクタの動きをコマに落とすなど、次第にデジタルのツールが充実しつつあるが、まだグラフィックスのクリエイト環境は不十分であると思う。最近は話題ではなくなったが、3DCG映画が流行った時に、それらをどのようにして制作したのかというメイキングビデオも作られて興味深く見ていたのだが、それらの技術の内で素人が簡単に操作できるようになったものはまだ少ないからだ。
プログラム開発という分野も利用者の多いスマホ向けに焦点が移ってしまって、なかなかクリエイティブのインフラ的なところでどのような開発が進んでいるのか見えにくくなった。ただARの制作のようなところから、垣間見れる部分はある。またGIF動画的なツールは増えている。何年かすればデジタルのクリエイティブ環境は大きく変わっているかもしれない。
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