投稿日: Dec 06, 2014 12:20:46 AM
本が不滅かどうかを考える前に、本が無くなるとか無くならないという議論が不滅のように思える。というのは消費財として大量販売ビジネスとしての本と、文化的な財としての本が入り混じって話しあわれてしまうからだ。すでに何百万部を発行する漫画週刊誌はなくなったとか、何十万部あった雑誌が何万部になってしまったとか、量販ビジネスとして見ると十分に出版は縮小してしまった。これは先進国どこでも共通することである。
だからといって将来ゼロになるとはいえない。昔から数百~数千部しかなく、将来も同じくらいという会報や機関誌もあるからである。つまり金がまわらないものは出版産業にはカウントされないが、読者からすると出版物には違いないという非対象の関係があり、これがビジネスとしての出版と文化としての出版の差である。
古本や図書館はビジネスとしての出版とは一線を画するので、出版がマイナス成長になると攻撃対象にされたりする。これもビジネスと文化の話が混同してしまっている例である。これも読者からするとバカバカしい話で、目下のベストセラーのランキングよりも、過去から累積的に何度も読まれている本の方が尊敬されるわけで、それは現在の書店にはなく、古本屋や図書館にしか置いていない場合がある。
しかしだからといって何らかの価値があっても、お金のまわらない過去の本は電子書籍にする作業の費用も出せない。そこでGoogleBooksなどがあったわけだが、今の出版ビジネス側からの反対もあった。実際には絶版本に関してはネットで公開されても出版界の利益を損なわないと思うのだが、この方式はあまり話題にはならなくなっている。
前職でも過去に出版した本の一部をWeb上でアーカイブしていたこともあったが、今はもうやっていないようである。本来は元の本を出した出版社がアーカイブもすればよいのだが、自分ですることができないならGoogleにお任せするのがいい。
前職で出していた単行本がなぜかGoogleBooksで見られるものがあるのだが、これが何らかの契約でそうなったのか、勝手にそうなったのかはわからない。画面はスキャンではあるものの、ちゃんとキーワード検索も効くし、どこからも見られて便利である。また会報や機関誌もアーカイブにしてもらえれば、それらも含めてネットで見られることは大きなメリットになる。どう考えても狭義の出版ビジネスの立場で発言していることは時代に取り残されていくように見える。
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