投稿日: Oct 14, 2011 12:47:6 AM
ビジネスとコンテンツの関係を考えている方へ
記事『IT革命の先にあるものは』ではパッケージソフトを買う習慣がなくなりつつあることと、ネットの中で不特定多数が協調するビジネスモデルへの移行が起こりつつあり、それが既存のビジネスをこれから壊していくかもしれないことを書いた。脱パッケージに差しかかっているのが音楽・動画・TV・電子書籍などコンテンツ業界であり、さらにこの傾向は他の産業にも及ぼうとしている。
CDのパッケージ売り上げが下がっている主要因は大ヒット曲が減った既存音楽業界の体質の問題であろう。背景としては、主に携帯音楽プレーヤの普及である。これはCDより以前からWalkmanが使われていたように音楽の販売形態がレコードであれCDであれ、音楽を聴く局面はプライベートなものであり、プライベートな時間が人の移動に伴うことが多いからだろう。iTuneのようなダウンロード販売がCDに影響を与えた面もある。『電子書籍』というのはその後を追うかのようなビジネスプランが多いが、音楽の販売形態がお手本になるとは限らない。音楽を手本にしたいなら本の朗読でも売った方がましで、本の字を目で追って読むことが、生活のどういった局面にあてはまるかを捉えなおさないと、携帯音楽プレーヤの普及のようなことはおこらないだろう。Amazonの宣伝などを見ていると、屋外で独りだけのゆったりした時間を持ち、そこで本を読んでいる姿があるが、日本にはそんな習慣があるのだろうか?
ケータイマンガやアイドル写真集は暇つぶしコンテンツとしてはうまくはまっていると思うが、今以上に発展があるのかどうかはわからない。スマホ・タブレットの普及を前提に本を再発明するとなると、紙の本の再現よりも前述の読み上げサービスとかその先には本のコンテンツをラジオの番組のようにしてしまうとか、学習用なら本をカリキュラムに分解して組み合わせられるようにするとか、いろいろなサービスモデルが考えられる。語学の分野は昔からオーディオコンテンツを持っていた。そこに教育のナビゲーションをする部分もデジタルデータからオーディオ化して組み合わせると、プログラム自在でパーソナライズできる教材になる。そうすると利用者に事前テストをしておいてその結果から外国語講座を自動的に組み立てるようなことは可能だろうから、そういったバックの仕組みを共通に使って商品のラインアップとしては、資格取得向けの堅めの講座から、教養講座、企業研修、旅行者向けなど、異なったアレンジのサービスができるとなると、既存の学校や教育サービスとの重なりが多くなる。
こういったコンテンツのクラウド化と多面展開を既存の業者が行うのか、これから新たな事業者が出現するのか? Amazonでも楽天・SoftBankでも新たな事業者の登場であるわけだが、こういったことが産業のいろいろなところで起こり得る。今までパッケージ形態でしか売る方法がなかったのがコンテンツであり、そのデジタル化はパッケージの束縛からの解放であると同時に、そのコンテンツを利用していただいていた世界をも変えていくことになる。日本ではインターネットラジオがJASRACの制約があって発展しなかったが、ラジオ局がインターネットに流すラジコの逆で、コンテンツを持っているところがネット上でラジオサービスをすることは容易である。過去に眠っていたオーディオテープもデジタルにアーカイブされて、新たなサービスとして世に出てくることになるだろう。