投稿日: Jun 05, 2013 1:37:11 AM
便利さとは何かと考える方へ
今は当然のこととして使っているデジタルカメラも実用と言う点では10年に満たないほどの歴史しかない。ちょうど10年前にデジタルカメラのブームが来始めていて、それからほんの3年ほどの間にプロもアマもデジタルカメラ一色に激変していった。10年前にはさっきまで「デジカメでは写真の味が…」と言っていた人が次々と転向しだしたのである。
1980年代のOA化でワープロが登場したり、いろいろなものがデジタル化のダウンサイジングして行く中では、いつも同じような過去へのこだわりと、ある時点でのあっという間の切り替えが起こってきた。それが撮影の段階にも及んで、残すところは映像のみとなったが、それもその後すぐにデジタルシネマの波がやってきた。
こういった変化はニーズによって起こるのではなく、テクノロジー側から起こったもので、主として半導体・液晶の進歩のおかげである。デジタルカメラについてはファインダーに変わるカラーのモニタができたので、プロカメラマンにとってもポラロイドで試し撮りをする必要がなくなった。当然ながら半導体・液晶の技術はデジタルカメラの機能をケータイ・スマホにももたらせ、デジタルカメラ普及のボリュームゾーンであったコンパクトカメラ分野を圧迫するようになった。
カメラメーカーにとってはプロやセミプロ分野は固定客でニッチ市場なのだろうが、ではコンパクトカメラ分野の落ち込みに対してどのような施策をしているのだろうか? 一部のメーカーは医療用などの特殊なカメラの市場を押さえているが、産業分野の広くにわたって画像・映像によるソリューションを提供する気配は無く、過去と同じようにアマチュア向け簡易カメラを売ろうとしているように見える。一方で世の中では街中も、オフィス内も、高速道路も監視カメラだらけになって、画像情報の応用分野はものすごく広がっている。
デジタルカメラの技術は非常に進んだにも関わらず、デジタルカメラのビジネスは相変わらずの印象があるが、実際はデジタルカメラの登場時期よりも応用範囲が狭くなってきているのである。それは日常の多様な使い方がケータイ・スマホに奪われてしまったからで、これらに対しては例えば初期のデジタルカメラがUSBでPCとつないでWebCamになったり、PC側でコントロールして撮ったデータをPCに保存できたようなことが、今は殆どできなくなってしまった。つまりデジタルならではのシステム的な応用は切り捨てられていって、非常にアナログなコンパクトカメラの置き換えでしかなくなった。
撮影からデータのやり取りまでを一連で行わなければならない用途は、スマホ・タブレットのカメラ機能を使うか、PCのWebCamのようなもので組むしかないのだが、画質と価格という点ではコンパクトデジカメのほうが上なので、これと同等の品質のことをシステム的にしようとすると、非常に高い産業用の組み込みカメラを使わざるを得なくなってしまう。おそらくカメラメーカーはjpegファイルを生成すれば仕事はオワリだと思っているのだろうが、画像を扱う仕事はそこから始まるのである。