投稿日: Mar 03, 2014 1:15:57 AM
埋まらないものがある
ローリングストーンズ、エリッククラプトンなど大物の来日で盛り上がっているが、イギリスがロックを丸で自分たちの発明物のように、うまくマーケティングしているのは驚きでもある。確かにイギリスのロックはアメリカのロックのコピーではなく、オリジナルなものにしてきた。最初はアメリカのロックのヒット曲のカバーであったのだが、それは1960年代初頭までの話で、それ以降はアメリカの音楽をインスピレーションとしては使っても、独自の様式化をしてきた。 それと、誰がどうしたからそうなったのかは知らないが、イギリスロックのブランドというのがうまく作られた。これはファッション面もあるのかもしれない。
私はイギリスのロックを聴いた時期もあるが、ほとんどはアメリカのロックから、その源流を辿るようにR&Bやbluesを中心に聞いてきた。「その源流」とはヒット曲の産まれ生じた背景の音楽シーンのことで、個人の創作性とは別にある共通の音楽文化のことである。 昔のロックバンドは必ずと言っていいほどチャックベリーのジョニーBグッドなどのレパートリーをもっていた。イギリス人や日本人はチャックベリーの弾くギターを丹念にコピーしていた。チャックベリーは大ヒットをいくつも飛ばしていたので、そのカバー曲はアメリカでもいっぱいあるのだが、意外にもギターがないものが多いのである。つまりチャックベリーの曲の歌を聞いているのか、演奏を聞いているのかの違いである。
日本人は英語の歌詞がわからないから、どうしてもギターに意識が行がちだが、イギリス人もギターを重視していたがために、日本を含め世界に通じるような音楽になったのである。逆の見方をするとギターのないアメリカのカバー曲というのは、その歌い方に共感する要素がないと、聞いててピンとこないものかもしれない。これはローリングストーンズやエリッククラプトンがやっていて、カッコいいと思った曲の原曲の黒人音楽を聴いてみると、拍子抜けするとか分からないということがよくあることでもある。一般のロックファンはこのギャップを乗り越えることはできない。
しかしアメリカの特に南部で実際に黒人の音楽を直接聞くことができるようなところに住んでいる人たちは、白人であっても前述の断絶感はあまり持たない。そういう白人のやるロックはローリングストーンズやエリッククラプトンのようには世界に広がっていかないのである。それらも今日ではYouTubeで結構見ることができるようになったので、ひょっとするとアメリカ南部のロックがこのギャップを埋めるようになる可能性はあるのかなと思う。
3月23日には、白人ロックからは思いっきり断絶の彼方にある黒人音楽をかけるイベントを 四谷3丁目の BlueHeat で行います。