投稿日: Sep 19, 2015 12:37:13 AM
日本においてBluesの解説といえばこの人が第一人者というのと日暮泰文氏であって、40年以上前から雑誌やライナーノーツに書いていて、私からすると鈴木啓志氏とともに先輩である。さらに先輩というと桜井ユタカ氏中村とうよう氏がBluesについて書いておられたが、仕事領域としてはBluesが第一ではなかった。つまりBluesどっぷりのライターといえば日暮泰文氏である。氏はブルース・インターアクションズの創業者でもあり、何年か前に引退する際に回顧録を残された。
私もアマチュアの同好会のころにはつきあいがあったが、Bluesのレコード会社であるブルース・インターアクションズができてからは疎遠になっていった。それは私が日本盤を買わなかったからでもある。日暮氏の文章には特徴があって、大変Bluesに関して思い入れのある書き方をする。音楽以外に黒人の日常生活がどのようなものであったのか、などもよく表現されていた。そのおかげで日暮氏の関心の高い分野は日本盤のレコードも日本語の本なども充実したのだが、残念ながら氏のBlues伝道によってブルース・インターアクションズ以外の日本のレコード会社から多様なBluesが紹介されることにはならなかった。
つまり、ヨーロッパに比べると日本で手に入るBluesは相当偏っていたといえる。最近アメリカやヨーロッパではサイコビリーのような動きがあって、その中でBluesのレパートリーも採りあげられているのだが、Blues以外にロカビリーとかR&Bのレパートリーも混ざっている。これは日本人からすると一見不思議なミックスのように思うかもしれないが、1950年代にアメリカでBluesを出していたレーベルはR&Bもロカビリーもラテンがかったものも出していて、音楽的にも相互に影響をし合うものであったのである。
言い換えると黒人Bluesは孤立した音楽ではなく、黒人社会の周囲と交じり合って多様な音楽を産み出す種となっていった。ただそういった音楽はローカルな音楽であって、日本には殆ど紹介されなかっただけである。メキシコ系の人のBluesというのも結構あるのである。アメリカ南部のメキシコ系の音楽のレパートリーのひとつにBluesはあったとも思える。
日暮氏に何も文句はないのだけれども、他の関連した音楽にあまり関心を示さない日本のBluesファン像というのがずっと気にかかっていたことである。