投稿日: Nov 22, 2012 2:31:16 AM
アメリカのような論争は起こらないと思う方へ
衆議院議員選挙が年末に行われるので、いろいろなニュースが慌しくなっているが、マスコミは政党や候補者に関して税、原発、TPP、憲法など以前から言われている表面的な見解を右から左に流すだけで、あまり論説的なことは取り扱わない方向にあるように思える。テレビはもちろん大新聞になればなるほど抱える読者層の幅が広いので、突っ込んだことをいえば騒ぎが大きくなるからだ。アメリカはジャーナリズムの国と自称するほど多様な意見が紙面やメディアに採り上げられるが、それはひとつのメディアが多様な意見を扱うのではなく、大体の新聞は伝統的に共和党か民主党かどちらかの肩をもつので、そういった新聞同士が論戦を張っているような様相になるからだ。
つまりアメリカははっきりした意見がいくつもあるのに対して、日本は中庸を標榜するメディアが中心なので、どうしても新聞が論戦の主舞台とはならない。またアメリカは(見習うべきではないと思うが)TVで巨費をかけてネガティブキャンペーン(比較広告)と展開していて、争点や主張ははっきりするが、日本ではそれらを耳にする機会は少ない。マスコミでも争点の○×は表現するが、掘り下げた主張を載せる余裕はないし、立候補者の選挙公報でも細かいところはわからない。だから選挙は新しいメディアにとっては実力を示して活躍できる最大のチャンスでもある。
ではネット上で政策論議がされるようになったかといえば、そういう堅いメディアは日本では登場していない点がアメリカとは異なる。アメリカの大統領選のことを記事『アメリカ大統領選とソーシャルメディア』『アメリカは選挙も報道もタッチパネル』『ビッグデータ礼賛が見落としていること』で触れたが、メディアも政治家も最新のメディアテクノロジーを駆使しているのに、日本の選挙ではデジタルメディアのネタになるようなことがあまりなくて困ってしまう。日本の課題としては大政党は寄り合い所帯であり、そこからスピンアウトしたり、くっついたりを繰り返しているだけで、そのレベルの悶着をいくら採り上げても本当の政策論争にはならない。
地方の首長が無所属ばかりになるのは、マスコミが採り上げるような政党の政策論争に有権者が期待していないからで、地域政党はむしろ中央の官僚体制を革新しなければならないと切り替えしているのだから、政策論争の場に官僚を巻き込んで、果たしてどんな人が官僚になるべきかを国民に考えさせるようなことが必要だろう。メディアを使うのはマスコミなど既存メディアの特権ではないのだから、ネットメディアによって今までは採り上げられなかった議論ができるようにならないと、新しいメディアも宝の持ち腐れになってしまう。
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