投稿日: Oct 31, 2011 12:11:24 AM
出版界のこだわりの方向に疑問をもつ方へ
本日地球の人口が70億人になるという。日本の高度経済成長が始まった頃はこの半分だった。日本の出版販売額は10倍になっている。ただし日本の出版のピークは前世紀末にあり今はバブル以前に戻って、それでも10倍である。バブル以前と今では売上げは同じようなものなのに、出版点数は倍になっていて、いかに出版の経営が逼迫しているかがわかる。出版不況とはいっても出版物は売れてはいるが、それ以上に過剰生産をしているのが経営を苦しくしていることを以前にも書いた。印刷製本された本の半数近くが捨てられる。年間7万点も新刊が出ては書店にも行きわたらないし図書館も吸収できないので、広く存在が知られることはない本がどんどん増えていく。
よく言われるようにこういうドンドン発刊・押出しという業界の仕組みができたのは高度経済成長とともに国民のリテラシーが上がっていったためだ。しかし経済もリテラシーも飽和したのに、業界の仕組みだけが動き続けているのである。日本の高度経済成長に沿ったビジネスモデルは善から悪に評価が変わってしまったものがいろいろあり、出版モデルも資源の無駄使いという点ではいずれ大ナタが振るわれるべき対象で、とても70億の人々のためのリテラシーの仕掛けのお手本にはならないものだ。
だからCSR(企業の社会的責任)という観点で外国から見て日本の出版モデルを尊敬する人はあまりないだろうし、日本の出版社の手助けをしようというところは現れないだろう。日本の出版業界は孤立しているのである。当然ながらeBook関連技術も日本の出版業界のためにあるのではないから、電子書籍は救済主にはならないだろう。しかし今の問題のソリューションの一部にはなる。 地球規模で考えると紙の消費を伴わないデジタル情報システムの方が、省資源という点でははるかに大きなソリューションで、それはもっともっと広まるべきものである。
しかしそれで紙の出版が亡くなるというのは極論で、逆に今は「やはり紙のほうが使いやすい」という市場開発や商品開発こそビジネスの焦点にするべき点である。中国で紙の消費が増えているのはパッケージと書籍であって、雑誌と新聞が減っている。日本でありとあらゆる出版の試みをしてきた過去数十年を整理するならば、資源の無駄ではなく、70億の人に評価されるものは考えられるはずである。なぜならデジタル情報システムで新たに使いやすいものが開発されるまでには、やはり10~20年はかかっているからである。