投稿日: Oct 17, 2015 12:30:29 AM
私が子供の頃はラジオ・テレビで紹介された曲の中からヒット曲が生まれていたのだが、今はヒット曲には全然縁が無い生活をしているので、どのように新曲が認知されていくのかわからない。息子が何を聴いているか気にしてみると、アニソンだとかニコニコだとか、音楽マスメディアではないものもも相当大衆的に浸透しているようにみえ、昔のヒットパレード的な単純な時代ではないなと思った。
1970年くらいまでは45回転シングル盤が先に発売されて、後からそれらが集められてLPに編集されるような流れだったのが、次第にステレオの時代になるとともに最初からLP用録音がされるように変わっていった。これは基本的にはLPを量産する体制であって、そのために45回転盤のような1曲1曲をマーケティングするということは減っていった。
当然ながらLPもマーケティングしなければならず、その販売時点で時流に合わせて選曲を変えるようなことがされていた。つまり録音された時点の意図とは別に、LP化の際にあらためてアルバムコンセプトがたてられるということも行われるようになった。
私は1950年代から1970年代のアメリカ黒人Blues+R&Bが主なので、ほとんどモノラルの45回転盤を集めているのだが、最初に45回転盤が出る時のうたい文句と、LP化される時のコンセプトの違いには戸惑うことが多かった。例えばJazzボーカルで名を成した人のLPからは想像もできない赤裸々なBluesが45回転盤の時代には出ていたようなことはよくあった。つまり45回転盤がいろいろ出た中から、そういった過去のBluesを削除してJazzボーカルのLPが作られていったことをあらわしている。
JazzでもSoulでも、LPが出る時にはBluesは入れないという風潮が出来上がっていったのである。それは1960年代初頭の公民権運動の広まり以降はBluesの録音がされなくなっていったことと同期している。Bluesはライブでは歌われていてもレコードとしてはラジオやテレビで紹介してもらえず、マーケティングし難いものになっていた。
ラジオやテレビは音楽の放送時間枠が決まっているので、黒人のrockやR&Bで目立つ曲が増えてくると、Bluesなど古い形式の音楽は後回しになっていったということもあっただろう。
しかしアメリカでは締め出されたBlues系音楽はイギリスに飛び火するようになった。モータウンを興したBerry Gordy はBlues系音楽を締め出した張本人でもあるのだが、モータウンの初期にはいくつかBlues系のヒットも出していて、有名どころは "Money" である。この曲はアマチュア時代のビートルズもローリングストーンズもレパートリーにしていたほど定番の曲となっていた。イギリスではアメリカのR&Bは紹介はされていたものの、それ以上にライブ中心のロックシーンが盛り上がって定番の曲をみんなでシェアしていた時代だったといえるだろう。
これはMoneyという曲をレコード会社がマーケティングするのではなく、ミュージシャンがマーケティングしていたようなものである。こういうライブの盛り上がりの中からヒットがでるように、再びなるのだろうか?