投稿日: Oct 06, 2015 12:50:21 AM
これ私は、なかなかモノが言い難いテーマである。それは他の産業界とは異なって出版界独特の雰囲気を感じるからである。おそらく他のどの業界でも、国が予算を計上しそうだとなると業界を代表する団体がそれを何とか使おうと動き出す。そして予算が決まるころには業界の方で調査・研究・開発のメンバーはすでに動きだしている。所轄官庁がどこであっても、金の出る根拠が何であろうとも、どういう外郭団体を経て出るものであっても関係なく、それ以前に業界が何をしたいかが決まっているからである。
ISO10646(ユニコード)の立上げまでは、異体字研究と文字拡張のテーマで、日印産連→規格協会→情報処理学会と、3か所にまたがって10年かけて調査研究が続けられた。言い出したのは大日本印刷の高橋昇三氏で、実作業は田嶋グループが10年以上続けた。
EPUB3日本語縦書きというのは、最初は日本語組版のテーマで、規格協会→日本印刷技術協会→W3C→IDPFと、4か所にまたがって10年近くかけて小野沢グループが作業を続けた。
私は両方とも関っていたが、いずれのグループも日本のベストメンバーで構成されていた。それはテーマ設定が明確なら、各企業の研究・開発の中からふさわしいメンバーが集まってくるからである。
こういう作業は一企業の手には負えないものであるから、業際的に引き受けてもらう中立なところが求められていた。各団体もそれぞれの予算や人材や年度計画などの制約があって、長期には作業が引き受けられないので、作業グループはホストしてくれる団体を探してはジプシーのようにさまよいながら、ボランティアで調査研究をしているのである。
jpeg/mpeg xml なども同様である。しかし電子化に積極でない出版界はこういったボランティアの調査研究に入ってこなかった。つまりこういうボランティアのグループが、どこかの官庁から金が出るのを狙っていたのである。
電子書籍に関しては、ケータイの時代に次の展開を想定して、インプレスの塚本さんと調査研究をやりかけていたことがあった。当時は配信直前の業務に関っていた2大企業はインプレスと凸版印刷だった。ところが1年も経たない時に塚本さんの事情で中断せざるを得なくなって、それっきりになった。そこでとりあえず日本語縦書きに関するところだけは規格協会のものを下敷きに自分たちで作業を進めて小林グループと一緒になってW3Cに提出した。
中断して止まってしまったのは、どのように電子書籍を検索可能にするかという点であって、残念ながらそれはどこにも引き継がれていない。経済産業省ではどんなテーマをすればよいかわからないので、業界団体の方からアプローチをする必要があるのだが、その基礎となる調査研究グループが出版界には欠けているように思う。