投稿日: Jan 07, 2015 12:45:49 AM
日本ではLINEがメジャーなチャット手段であるが、世界的にはWhatsAppがメジャーである。この2つのサービスは、ユーザにとっては大差ないかもしれないが、サービス提供者側は対照的なものである。LINEはインターネットの世界ではおなじみの広告モデルとアイテム課金で稼ぐモデルで、どんどん規模を拡大すると長者になるという指向をもつ。
それに対してWhatsAppは広告を排除している。チャットしている人にとって広告を見たいということはないだろうというコンセプトである。その代りに利用者に課金していて利用2年目から年間99セントを支払う。チャットは知っている人とのコミュニケーションであり、それはずっと続くものであるから、サービスの利用者は支払い続けるだろうと考えている。
しかしWhatsAppが年間99セントでは、何億人かが利用しても何百億円の収入にしかならない。要するに収入の上限が見えているのである。そこで収支を改善するにはコストダウンしかない。そのためにLINEの従業員が何百人かは居るのに対して、WhatsAppの従業員は何十人しかいない。WhatsAppの方が利用者は大いにもかかわらずである。
こういう少人数で大規模なサービスをする指向は、インターネット上ではWikipediaとかCraigsListとかがあった。もし99セントで年間のWhatsAppチャット代のコストが賄えるのだとしたら、インターネットのそういう特質は今後いろいろなところに波及していく強力なポテンシャルがあることになる。言い換えると他のコストはfakeということになる。
ネット上ではサービスを釣りにして広告で稼ぐというのはありふれた方法ではあるが、それしか方法が無いわけではないことが重要であろう。例えばLINEの従業員の殆どは利用者が使うサービスに仕えているのではなく、広告主に仕えて働いているのである。つまり従業員の大半はサービス向上には関係ないことになる。
しかしWikipedia、CraigsList、WhatsAppは、人がいないのでサービスの向上もあまりないから、LINEなど広告依存のサービスにとっても脅威とはならないのだろう。
広告モデルのために多くの人を雇っているというのは雇用対策としては評価されるのかもしれないが、もしネット上の広告効果の化けの皮が剥がされてしまったならば、どうやって会社とかサービスを維持していくつもりであろうか?どぶ板営業に依存していたGrouponのケースを考えてみればよい。
紙の雑誌の衰退は、広告モデルであったからで、あまりにも費用対効果が曖昧なので、ネット上のレスポンスが取れる広告手段の方にシフトしてしまったからだ。そのネット上の広告もPC向けからモバイル向けにシフトして、そこにもいろいろな浮沈が起こっている。まだ今は紙媒体や電波媒体から奪い取る余地があるからネット広告は伸びていくのだろうが、その先に何が起こるかを考えておいた方がよいだろう。
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