投稿日: Jan 28, 2012 1:2:49 AM
いつ必須なものになるのかと思う方へ
近年いろいろ話題が多いテーマであるが、お隣の韓国が何年までにとか、日本でも電子黒板の導入が、とかいっているうちにスマホ・タブレットが普及してきて、安いタブレットに教材を入れて学校で使うとか、生徒に貸すとかの検討も始まりだした。コンテンツに関してはAppleがiBookAutherを出して教育市場に進出しようとしている。これらはまだ義務教育から大学教育までバラバラな動きなので、すぐに教育改革に結びつくものではないだろうが、1980年代から2000年問題が騒がれた前世紀末にかけて企業の電子文書化が進んだことの次の大きな潮流になるだろう。
Steve Jobs がAppleの初期から、またNeXTの時代も、そしてApple復帰後も教育に強い関心を示したことは、記事『Appleの使命は垂直統合』に書いたが、Jobsの視点はあくまで受講側のツールであって、教育産業というビジネス面は全く欠如している。アメリカの教育分野では10数年前からeBookの利用とかBookOnDemandで教科書を作ることは取り組まれていたが、大抵のプロジェクトはなくなってしまった。それは後退ではなくWebによって教育を先に進めるところが出たので、単にeBookの延長では教育改革のタシにはならないことも明らかになってきた。
今までの電子教科書問題の反省としては、紙の教科書を無くすこととはできないので、紙と電子の2重の負担になる割には、教育成果にそれほどプラスアルファは無いことである。電子化で考えられるメリットは教科書だけでは達成できなくてeLearningとの連動が必要になるということだ。個々の受講生ごとにフィットする内容によって学習の停滞を突破できるようにして、また通信教育のような孤立感がないようにSNS的な情報共有や交流をさせ、他のコンテンツとリンクさせてモチベーションを維持させるなどのマネジメントはIT化でかなり半自動化が可能になる。それらで教育産業の人的なリソースを浮かせて、代わりにチューターとして働いてもらって受講者がゴールする到達率を高めるのがeLearningである。
そのためには紙の教科書を電子化するだけでは不十分で、教材の再構成が容易にできるようにしなければならない。たとえば日本の通信教育におけるOneToOneの個別学習では、教材はページごとに細分化していたり、今は問題ごとに細分化して、しかもレベル分けや進路ごとなどの構造化されたデータベースにして、オンデマンドで自動再構成が可能なように変わりつつある。こういった可変コンテンツをナレッジシステムのような応答のメカニズムを通してやり取りするようになると、必然的に電子教科書にならざるを得ない。
これは大学改革とか考える場合には採用されるかもしれないが、既存の運営を変えたくない場合には面倒がられるので、なかなか道が遠いように思われる一方で、通信教育ではかなり実現しつつあるところもある。つまり企業がIT化によって明暗が分かれたようなことが、今度は教育界で起こるのだろうことが伺える。