投稿日: Feb 04, 2015 1:12:0 AM
時代が下っても漢字の数は変わらないはずなのに、文字コードのレベルでは漢字のバリエーションが増えていって悩ましいことを、記事『外字の行方』に書いた。字形のバリエーションを増やそうという圧力の最大の要因は日本の地名人名であった。
文部省管轄の教育漢字は相当制限されていたのでJISの規格化においても問題は少なかったし、むしろ常用漢字のような手書き文字と活字形の対照の考え方とか丸め方はJISでも大いに参考にしたし、参考にし過ぎてJIS83の混乱をもたらしたようなものだ。
ところが法務省は別途人名漢字を定めていたし、戸籍の窓口業務における文字の整理のルールがあったものの、それらは複雑すぎて当初のJIS化では除外して考えた。それが後になって字形のバリエーションが増えることにつながる。
私は地方自治体の担当課のヒヤリング調査なども行ったことがある。そこで人名外字の実態というのを見た。それは大きくは4つに分けられた。
0.間違い
1.朦朧字形(うろおぼえ)
2.画数変更(点画が多い)
3.変態仮名
このうち、0.間違い は外字の問題ではない。明治になってすぐは誰もが教育を受けたわけではなく、辞書もまだ整っていない時代には、どのように漢字を書くのが正しいかが分かっていなかったという時代の遺物である。これは結婚などで新戸籍を作る場合には標準的な漢字に書き換えるように勧められて減っていった。窓口の人の話では、誤字であることを指摘するとほぼ皆が訂正するという。しかし過去の戸籍には残っている。これを情報交換に使う必要はないだろう。
漢字の点画の位置や数がうろおぼえでちょっと違うものは始末が悪く、渡辺の辺の正字が何十字になってしまう問題である。これも本来は手書きの際の揺れであるので標準形に戻さなければならないが、日本には標準形の典拠が無く、漢字研究が康煕字典とかを元にしている間は日本では説得力をもたない。日本の実情にあった典拠を作るために、未だに日々どこかの委員会で整理作業が延々と続けられている。これに関して私はもう降参である。
うろ覚えはまだ正字に戻せる可能性があるが、もうひとつ厄介なのは点付の土など確信犯的に点画の数を変えてしまった文字である。これには本家分家の区別とか、名前の画数占いとか、当事者には言い分があるのだが、IDのためで一種の手書きサインのようなものなので、意味とか音とかに関係しておらず、情報交換とは区別した方がよいと思う。
変態仮名を使っている人はもう殆ど死に絶えたであろうから、過去の戸籍の問題になる。戸籍は戸籍法がある以上は処理しなければならないのだろうが、情報処理の観点からは戸籍の字形よりは戸籍には欠けている「読み」の方がもっと重大な問題のように思える。漢字の整理は「読み」や「意味」との関連でおこなわれるからだ。
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