投稿日: Apr 02, 2010 8:26:10 AM
デジタルメディアが文化障壁を弱めると思う方へ
またひとつ事例ができつつある。Appleのnude排斥がドイツで思わぬリアクションを引き起こしているように見える。Steve Jobs は仏門に入ったのではないかと思わせるほど、清廉潔白路線を貫きだした。以前からの鶴の一声のやり方は変わっていない。それがコンテンツの一つ一つに対する検閲のようなことになってきたので、波紋を呼んでいる。大方の人はJobsに何を言っても始まらないから、好きなようにしてくれ、という気持ちだろう。
しかし筋を通すという立場からは、検閲は無意味なことだと考える人もいる。折りしもiPadの発売時期で電子書籍の話題も盛り上がっているが、このようなコンテンツ系になるとnude除外は大変制約が大きい。だいたいヨーロッパは宗教画でもアダムとイブのようにnudeはバンバン出てくるし、日常のTVでも素人が裸で出たり、何かあると公衆の前でも裸になって訴えることが行われるところなので(Air Comet Attendants' NUDE Calendar: Spanish Airline Workers Strip In Protest Over Benefits (PHOTOS, NSFW))、Appleのnude排斥は論外に思えたのであろう。
iPhoneも類似したスマートフォンがいっぱいあるが、iPadも同じことで、PCの生産国にとっては注文があればいくらでも似たものを作れる体制にある。だから続々とスレートコンピュータが現れているが、そのひとつでhttp://www.wepad.mobiというものをドイツで出版社が相乗りして使おうとしている。スレートはほぼWebブラウザをハードウェア化したようなものなので、PCのようなOSの違いを感じさせない。WePadはAndroidを使っているようである(ブラウザのためにOSがあるみたいな話は面白い)。
最初はエイプリルフールネタかと思ったが、まじめなようで大手の出版社がいくつかタイアップしていて、場合によってはもっと大きな結束になるかもしれないと思われた。その理由がnudeに代表される価値観の違いが埋まりそうにないからだ。いいかえると技術的な障壁とか独占によって文化の境界を作ろうという考えは、もう通用しないといえる。iPadがどれだけ人気を得ようとも利用者が皆仏門に入ることはないだろう。どこかでAppleの気に入らないことも広まるに違いない。メディアを制御して文化を制御しようとすることは、次第にできなくなる方向である。
残念ながら、その方向は人が賢くなったからではなく、メディアが多様化したからでしかないのだが…