投稿日: Dec 06, 2010 11:26:50 PM
ITでも倒産する会社が増えていると思う方へ
Mashup Awards6 の受賞発表があった。ITは若い人が個人でも自分のアイディアを形にすることができて、自由な発想のものが世に現れる面白い分野である。次第にMashup Awardsに取り組む人々も、セミプロからアマチュアに移行していくのではないかと思う。まだこういった流れとビジネスはつながっていないようだが、次世代のIT業界はビジネスと言う有用性・合目的性の世界に個人の創造性を引き出すものとなるだろう。それには若い人を刺激するだけではなく、若い人を受け入れてビジネスに活かす側の姿勢も整えなければならない。しかし実際には既存のIT企業を作り変えることは大変な難しさがある。出版・印刷業界が過去の利益構造に執着していて、リスクを伴う新たなビジネスには舵取りしにくいのと同じようなことを、既存のIT業界にも感じる。
記事『似て非なるもの』では、「今まで提供してきた技術やサービスに、バズワードの新しいキャッチフレーズをつけて、あたかも新しいことを始めたかのように装う」IT業界のことを書いたが、そのような習慣が長く身についてしまうと、そもそも技術革新に関心が薄れてしまって単なるブローカーのようになって、技術革新を追い風とした問題解決ができにくくなってしまう。ITにかけた投資の回収は効果が上がるのと同時に、IT運営コストが次第に下がっていくことも効果があがる。つまりシステムを考えたときの最初に狙った効用は今後も失われないとしても、技術革新の中では後から出てきたシステムの方が同じ効用を安いコストで実現してしまうので、常に土台となる技術の変化には対応していかないと競争力は低下していく。上場しているIT業の決算を見ると、上向きと下向きの会社に2極化していることがわかる。
当然ながらバズワード付替え偽装のITシステムは負け組みの方に向かうのだが、このことの認識は当事者にはなかなかないと思う。今年は電子書籍の話題も多く取り上げたが、技術という点で電子書籍自身に新しい要素はない。従来紙の上で実現してきたこととWebで実現してきたことを足し合わせたようなものだからだ。このような状態では電子書籍のシステムは低価格の方にしか行かないで、どれもAmazonDTPみたいなものになるだろう。ビジネスとしては、記事『作品-出版-読者』で書いたように出版はコンテンツをもとに電子書籍その他諸々のプロデュースをすることで売り上げるようになると思うので、実は制作技術面はビジネスのきっかけにはならないだろう。少なくとも過去の技術を振り回すだけでは進化は無く、そんなことだけしている会社はIT業界に居るとしても化石のようなものだ。
しかし現実にはデジタルメディアビジネスとはいっても有名なIT企業の化石のような提案がはびこっているので、ブレイクする可能性もなければ、会社の将来も危うい状態だから、Mashup Awardsに登場するような若者の活躍する場にはなりにくい。既存の技術の使いまわしに終始していたIT屋は、今日の技術革新のなかで自社の強みが何処にあるのかないのか、もっとと自社と外側の世界のギャップを認識する必要がある。今はITにはコストがかからないので、最初から起業しようという若者も増えているので、そういった人たちと刺激しあいながらコラボレーションすることが、お互いのために重要だろう。