投稿日: Sep 20, 2013 12:26:36 AM
なかなか顧客本位になれない日本人
よく、顧客の目線で考えろ、といわれるが、本当にそうすると昔の「暮らしの手帳」のようになって、ビジネスを考え難くなってしまう。ユーザー視点とビジネスを単純に語れたのは、市場が青天井で開拓の余地が無限にあるように思えた時代のことである。つまり顧客が求めるようなものを作れば売れるという単純な式が成立した。しかし需要と供給が逆転し、たとえ顧客目線の製品でも大抵の工業製品はすぐに作り過ぎに陥ってしまう。競争社会においては競合会社が改善品を出すというシーソーごっこが起こるので、製品寿命は顧客の意図よりも短くなってしまって、その意味では顧客目線ではなくなる。
例えば日本の学校は6・3・3・4制なので、入学時に購入したものは卒業まで使えたほうがよいし、出来れば弟や妹に引き継げるのが好ましい。紙の出版物ならば数年の寿命は考えて作られている。しかしこれがエレクトロニクスデバイスを使ったメディアなら3年もたないことも多い。実際に活用するのに費やす時間に対して、機種変更やアップデートといったことに費やさなければならないオーバーヘッドが多すぎはしないか。もしそれをしなければ利用機会がさらに減ってしまって、コストパフォーマンスが下がる。
子供はスマホを使ってきたが電子辞書デバイスもiPodも使っていて、いくらスマホで何でもできるといっても、スマホの寿命や乗り換えのオーバーヘッド作業を考えるとひとつのデバイスに全機能を持たせない方がよいらしい。そのうちすべてのアプリがクラウド化すれば、デバイスはどうでもいい話なるが、そうなると人々はガジェットへの興味も失ってしまうだろう。だから現状のデジタルコンテンツはやはり新ガジェットの魅力に引っ張られてコンテンツ市場が拡大しているだけに過ぎないと言わざるを得ない。
企業であれ学校であれ、デジタルデバイスでコンテンツを扱うのが日常となった際には、テレビにおける録画のような私的複製の問題があらゆるところで起こってきて、これは今のビジネスでは顧客の目線で考えることができていない。コンテンツと顧客目線の関係は奥が深く、今「ビジネスモデル」と称する金儲けの仕組みのレベルではなく、もっと徹底した見直しをしなければならない。
例えば、ネットで無料のものと、それに付加価値をつけて有料のものとにサービスを差別化して、フリーミアムというモデルがあったが、有料はサービスのごく一部で大多数は無料ユーザになり、実態としてはそこが世の中を動かしていしまう。古本屋と図書館にしか行かない読書家とか、CDは買わずライブ中心の音楽家とか、部活・文化教室など、今のコンテンツビジネスの顧客になっていない人たちも含めて考えないと本質的なニーズはつかめないからである。