投稿日: Jul 02, 2014 11:11:52 PM
ウェアラブル・コンピューティングで健康管理アプリというのが画策されている。しかし日常生活で健康管理のためにデータを取る必要がある人はそんなに多くはないと思う。何か治療中の疾病があって、医者の監視が必要な人は、それぞれ疾病にあわせた専門のデータ収集が必要なので、そういったものをウェアラブル・コンピューティングでカバーしようということでもないだろう。どうもウェアラブルだから健康管理でもやってみようというのは、ムリクリなアプリ開発のような気もする。
健康管理という点でIT利用を考えると、中高年が慢性疾患にならないように予防的なデータとりが考えられる。人間は昼間活動をしている時間の合間に排尿・排便があるとか、夜睡眠という非活動の時間帯があって、活動しているところではその時々の条件で体のコンディションは上下するのだが、排尿・排便とか睡眠という体のメンテナンスモードの時は、体は一定の状態になるので、その時にデータを取るのがよいのではないかと思う。例えば食べ過ぎると胸焼けして寝付けないとか、熟睡の程度などのデータもとれるであろうし、排尿・排便のタイミングや量や成分なども何らかの健康のバロメータになるように思える。
こういった人間の非活動領域は、だいたい場所が決まっていて、そこに何らかの計測装置があれば、そこからモバイルのデバイスにデータを送ってもらって管理することができるようになるだろう。例えばデータの取れるトイレがあれば、そこを使えばスマホなどにデータが溜まる。これを解析するのはスマホにインストールするアプリでもいいし、クラウド上に解析ソフトがあってもいいし、かかりつけの病院の先生が参照するのでもよい。
こういう経験を専門家を交えて積み重ねていく先に、人の活動領域でも採りたいデータとか活用できるデータが見つかっていくのではないかと思う。
要するに特に腕時計型のウェアラブル端末の開発目標がよく見えないということである。技術的には今のスマホを一回りも二回りも小さくすることができるようになったということはわかるが、何のためにそうするのかが不明確である。全く同様のものにモノのインターネットというものがある。これもウェアラブルくらいの小さなコンピュータができれば、いろんなものに組み込むことができるのはわかるものの、そうする理由がまだ煮詰められていないように思う。
これら『何のために』という命題は技術論ではなく、現代生活をもみつめた哲学的な議論になりがちで、そういった哲学と科学を行ったり来たりするようなディスカッションは日本人が苦手とする領域のように思える。しかしGoogleとか欧米の人たちがいつかはそういう論議を乗り越えてテーマを見つけるに違いない。