投稿日: Sep 08, 2012 1:3:6 AM
紙でもデジタルでも我慢比べかと思う方へ
何か自分の関心の強い情報を編集したメディアを世に送り出したいという意識は文化・文明の進展とともに強まってきたものであり、デジタルであれ紙であれ、文化・文明が廃れない限りメディアは多様なものが増えていくことになる。いわゆる印刷術や電子媒体の登場のようなエポックがあると、火に油を注ぐようにメディアがあちこちで勃興する。その中で直近のものがWebであった。ケータイ・スマホはまだその延長上にしかなく、ケータイ・スマホでなければできないユニークなものはこれからだろう。それはまだケータイ・スマホ用メディアのオーサリング環境がWebなどに依存しているからである。
Webでの情報は新たに紙用に作られるの情報の量を超えるようになった。だいたい2000年頃からデジタルファーストは定着したのだが、まだWebでのメディア革命も途上にあり、解決すべき問題はいろいろある。それらの解決の目処がたたないと、本格的にケータイ・スマホの移行も始まらないと思う。それは主に制作コスト問題である。紙メディアの制作コストがデジタル化で大幅に下がったので出版界は新刊を乱発できるようになったのだが、それは単に版下・フィルム・校正紙といった中間制作物がなくなっただけでなく、バイク便とか写真の調達コストも下げることができ、直接の制作コストカットは一旦踊り場に来てしまった。
Webの制作ツールはDTPアプリなどを使わずにオープンなCMSを使えば無料に近いものとなる点がWebでの無料メディアを支えている。おそらくEPUBも同様の流れになっていき、グラフィック部分はデザインや画像・イラストなどの素材の制作コストだけになってしまうだろう。Webではこれ以上のコストカットはできないので広告モデルが盛んになった。無料の面白画像サイトやネタサイトというのはそのようなもので成り立っている。しかしまじめなサイトは訪問者も少なく広告が得られにくいし、大衆的なサイトであってもバナーの類の広告は今後離反が予測される。Webの大衆向けメディアはコンテンツの編集が緩く、質的にどうかなといわれているようなところが、さらに広告が減ると質はもっと下がるかもしれない。
デジタルのメディア制作がこういった負のスパイラルになる危惧があるならば、コストモデルも考え直さなければならない。特にタブレット向けのeBookはWebメディアの非採算我慢比べのようなところからスタートすればいくらも持ちこたえられないのは目に見えている。そこでどのようにすればよいのかについては、先般渋谷で開催した『グローバリゼーションを目指す世界の出版動向と日本 – フランクフルト・ブックフェアのボース総裁を迎えて』の記事『出版革命は、再びドイツから 』『メディアビジネスの多様性をどのように保つか 』にあるような、出版の新しいビジネス基盤作りにヒントがあると思う。その中心はコンテンツの調達の効率化になるだろう。
電子出版再構築研究会 名称:オープン・パブリッシング・フォーラム Ebook2.0 Forumと共同開催