投稿日: Jun 18, 2012 12:8:47 AM
自社はeBookについていけるのかと思う方へ
eBookの市場予測をした 2012 Global Entertainment & Media Outlook:2012-2016 が凄い。その要約はメディアパブにある。世界の書籍市場において、電子書籍の占める割合は2011年の4.9%から2016年には17.9%に膨れ上がる。年平均成長率30.3%で伸び続け、2016年には世界の電子書籍市場規模は208億ドルに達すると見ている。今はアメリカが独走状態だが、今後は教育市場向けもコンスタントに伸びていく。それ以上にコンシュマ向けが伸びるのだが、この中には日本のべストセラーが電子化する分も見込まれている。そこはひょっとするとアテがはずれるかもしれないという気がする。
つまりアメリカの場合はKindleによるコンシュマ向けeBookのヒットが大きな市場拡大要因であったのが、同じように日本が歩むとは限らないと思うからだ。おそらく日本でも紙の本とeBookを同時に刊行するようになるだろう。だがeBookのプロモーションにどれだけ力を入れるかは確かでない。英語のコンテンツの場合はeBook化によって市場は世界に広がるが、日本語をeBookにしても国内市場ではカンニバリズムになるという考え方は抜けきらないからだ。
だから日本のeBookはアメリカ以上に新規性が求められて立ち上がりが遅いのだが、そこでもがいて努力するとアメリカ以上に一皮向けたeBookのスタイルが出てくる可能性もある。単なる書籍の販売拡大以上の目標、例えばクリエイティブ指向とか開発指向がないと日本の立ち上がりの遅さには耐えられないかもしれない。ベストセラー出版においてはeBookの技術や進化ということは積極的に考える必要はないだろう。しかし新たなライフスタイルや用途開発を考えるところでは進化と共に市場が広がると考えられる。それは教育市場も含むもので、逆に着実な伸びが見込まれる。
ではeBookにおける進化とはどのようなものであろうか。例えば自炊のようなものは進化とは考えられていない。つまり元となる紙の本があって、そのイメージを画面に移しただけのものだからだ。しかし作業は簡単で、自炊業者が問題になったように安価に簡単に作ることが出来る。スキャンやチューニングには若干のノウハウが必要だが、OCRでもしない限りページめくり以外の機能はない。つまりクリエイティビティ(C)は低く、生産性(P)は高く、品質(Q)も低い。
また電子書籍という名称以前からあるPDFとかJPGをパラパラめくりするアプリを考えると、やはり(C)は低く、(P)は高く、(Q)は若干ある。出版デジタル機構も同様なものであろう。一方iPadのカッコよい電子雑誌は(C)と(Q)が高く、(P)が低い。eBookを作るとなると現実には(C)(P)(Q)の一長一短があるが、そこに甘んじていると発展がなく、環境変化を虎視眈々と伺って(C)(P)(Q)のバランスがよくなるように努力するのが進化につながるだろう。しかしそれは自力で全部できるものではなく、よいパートナーをみつけることで可能になるものだろう。
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