投稿日: Jul 12, 2011 11:7:40 PM
ペーパーレスに移行するのかと思う方へ
日本語ワープロ以来、文書作成の道具や方法は次々に変化し続けてきた。その中の小さな変化の局面について語ったものをつなげて俯瞰してみるとどういうことになるのだろうか?最大の変化は2000年前後で大きく変わったデジタルファーストである。最も変化していないのはオフィスのコピーかもしれない。コピーは減ってはいないだろうがオフセットによる大量印刷では半減してしまったものが多くある。一般に電子文書でまかなう部分が増えて印刷が減るという理解だろうが、もう少し異なる切り口で考えることもできる。
例えば安価に大量印刷して在庫管理しながら使うよりもオンデマンド印刷をするモデルが考えられたが、当初期待されたような進展にはならなかった。記事『硬直したソリューションを見直す』では、ルーチンワークを対象にシステム開発してずっと同じように使い続けることの限界を書いた。デジタル印刷は小ロット向けとはいっても、大量印刷のモデルを縮小したような考え方をしたからだった。大量印刷の下降とともにデジタルメディアの伸張があるわけだが、その時は印刷の前工程であるDTPとかPDFという情報加工の工程にも変化がある。大量印刷をスケールダウンしたデジタル印刷は、Webとデータベースを組み合わせたような情報加工のダイナミックな変化に対応できなかったのである。しかしデジタル印刷メーカーは印刷機と同じ「箱売り」のビジネスをしていて、それがソフト化・サービス化するデジタルメディアにつながらないことを記事『自律が求められるeBookビジネス』で書いた。
一般企業は自己の事業のために必要な情報手段を導入するのに、かつてはシステム部門が主導していたのが、次第に生産や営業の現場主導のものに変化していった。つまり現場で必要なときにすぐ使える情報手段として、メルマガ、Blog型、SNS型というメディアが普及し、マニュアルやドキュメントもタブレットやスマホを対象にしたeBook形式に向かおうとしている。これによって日常の編集作業が変わりつつあることを、記事『eBookの陰で忍び寄る脱DTP』で書いた。現場での最も緊急なテーマというのは、出力媒体ではなく、ビジネスにふさわしいコンテンツをビジネスに同期して作ることであるのだ。
それに最も近いのがWikipediaのようなクラウド型の共同編集の仕組みであって、ウイルス感染から津波や原発事故まで刻々と変化する内容であっても整理して提供されている。IT化が進んだ現在では情報源の多様化や、出力先の多様化が特徴なので、こうした入出力の多様な世界を基点としてシステム全体を考察することは困難になり、今必要な情報を発行できるシステムを中心に置いて、入出力はベストエフォート(その時点で利用可能なものを使う)と考えるのが一番柔軟だろう。記事『出版の自己変革はどこから始まる?』では、一例としてDTPよりもePubで共同編集の方が機動性が高いので、そのような方法が先行する可能性を書いた。そこから紙のドキュメントに持っていくことは問題ないが、ドキュメントの生成が現場に重心が移っていることを見て、現場視点での使いやすいドキュメントシステムに作り変える必要があるだろう。
従来のオンデマンド印刷が果たせなかったことに、分厚いドキュメントをモジュール化して、必要なドキュメントをオンデマンドで再編成するようなオンデマンド編集がある。これもDITAのような技術で対応するようになり、ドキュメントのオンデマンド印刷ではなくオンデマンド発行が焦点であることが見え始めている。
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