投稿日: Dec 24, 2011 12:59:15 AM
デジタルで蛸部屋から脱出したい方へ
Web上には星の数ほど情報サービスがあるが、もう更新されずに放置された残骸のようなサイトも少なくない。検索エンジンでよさげなサイトを見つけたと思っても、開くとがっかりな場合がある。紙の媒体に比べて気楽に開設できて、さっさとやめられるデジタルメディアの特徴が出ているわけだが、よく見ると「廃刊」になったのではなく、作りかけで挫折したとか、あまりにも短命で未完なメディアであったと思われるものもある。これはデジタルの特性というよりは、メディア制作の準備不足とか体制の欠陥と思われる。実は日本の出版界はアナログの時代から技術やマーケティングを欠いてメディアを考えていたのでデジタル化ができ難いのである。
つまりメディアのビジネスは3頭立て戦車のように、発行を効率よく続けるための技術や制作の仕事と、コンテンツの企画や編集の仕事と、マーケティング・販売・広告の仕事と、大まかには3つの能力がバランスして必要になる。Webが始まってアメリカの新聞社が大々的にネットで情報発信をすることができたのは3つの能力があったからで、その時もやはり少人数のWebのチームでも最低3人の責任者が必要といわれた。当時はHTMLを覚えれば誰でもホームページが作れるという風潮だったが、メディアビジネスを回していくためにはHTMLがわかる人に企画・編集・登録者管理・広告などもやらせるのは無理なのである。
しかも一つのWebサイトだけを運営していればよいわけではなく、Webでもいろいろなサービスが追加されるし、モバイルやeBookなどデジタルのメディアも増えていくので、そういった複数の案件が次々に起こる中で、どのようにマネジメントしていけばよいのかが大きな課題になる。通常は案件ごとに技術・企画・マーケの担当が集められてミーティングを重ねていく。上の図ではタテの箱である。そこでの課題を各チームが持ち帰って、作業分担とか予定表を作る。各チームにとっては知っている方法、得意な方法、ツールとかを入手したのでちょうどやってみたかった方法、などを使うことで複数の案件が平行に進んでいても乗り越えていけるように考えるだろう。つまり案件は非常に革新的なことをやろうとしていても、ともすると各チームの保身的な方法に引きずりおろされる可能性もあるのだ。各チームの処理能力とは別に、ICT意欲のバランスがとても重要になる。
だから紙媒体のような枯れた安定的な仕事のやり方ではなく、技術も内容も利用のされ方も流動的なデジタルメディアにおいては、各チームのモチベーションが革新的であるようなマネジメントが必要になる。各チームがデジタルメディアの進展の方向を見て、自分達のチャレンジ目標をはっきりさせ、日常の仕事を通して新しい能力をつけていこうという姿勢にしなければ、記事『メディアビジネスの事業立案』に書いたようなビジネスの成長にはつながっていかない。つまりラインの仕事の人々が工賃を稼いでいるだけの蛸部屋がデジタルでも復活してしまうのである。