投稿日: Apr 05, 2012 12:43:18 AM
便利なサービスへと寡占化が進むと思う方へ
e読書.jpというのに触れてみた。GoogleBooksが全文検索できて、該当ページが表示されるのを先に使っているので、e読書.jpにはあきれてしまった。いまどきこんなものを開発してどうなるのかと思う。インターネットは前世紀末から普及したものだが、前世紀末は「こういうことが考えられる」というコンセプト競争があった助走期間とみなされ、実際のビジネスを変えるようになったのは21世紀になってからだ。それも本格化したのは記事『本から始まって本に戻るAmazon』で書いたようにAmazonでもeBayでもゼロ年代の後半で、それまでいわれたクリック&モルタルのクリックとモルタルの比率は逆転した。要するにネット上のサービスはスケール感とか、「今、手元に届ける」といったリアルタイム感の競争になっているので、かつてのサービス開発とはいろんな点で異なる部分がある。
紙の文書よりもデジタル文書の利用が多くなるにはさまざまな法令の変更が必要になるが、それもかなり出揃って、デジタルファーストは勢いづいている。企業文書はすべてデジタルにする方向にある。しかしまだデジタルファーストは端緒であって、コンテンツビジネスではこれから取り組むべきことが多くある。新聞もTVも試練にさらされようとしている。しかしネットとの親和性の悪い組織では21世紀的アプローチでの開発がなかなか進まない。それが日本の電子書籍の状況だろう。電子書籍100万点というプロジェクトも、ネットの時代なら民間任せでもできることだ。それには私的複製の自炊を認めて、その成果物を版元に還元させればよいことである。広告付き無料コミック配信のJコミはそれに近いモデルである。
日本のかつてのハコモノ行政のようなムダな支援はネット・ICTでは不要である。第5世代コンピュータとか壮大なムダをした経産省であるが、その後も懲りないプロジェクトが続いている。情報大航海はどこへ行ってしまったのだろうか。狙いである検索の開発はまだまだ必要なことであって、取り組むべき大義名分は立つのだが、進め方が問題である。Googleやソーシャルメディアの発展をみると、どこかで巨大な補助金をせしめて開発するのではなく、アルファ・ベータの段階からネットで公開して、利用者のfeedbackを受けながら実証実験やアルゴリズムの蓄積をしていて、発展の過程をある程度オープンにしながら、しかもテスト中でも広告をとっていたりで、どこまでがコンセプト作りで、どこが実験で、どこが本サービスなのか区切りが見えないシームレスな方法をとっている。
一方補助金事業はいわゆるデキレースで委託先があらかじめ決まっているのに、手続きだけオープンに見せかけ、評価や成果は不問にして、予算を消化してオワリという場合が多い。補助金を受ける方も、元々自社事業の必要性がある分野の費用の一部を助けてもらうような形で、官民の関係というか癒着というかを継続するために、技術変化を大義名分にしているようなところがある。これらも毎年報告書が出るのだが、あまりチェックされていないので、大義名分と実際やっていることのギャップが指摘されることはない。こんなやり方でネット上の事業として世に出たものはないのである。一番ひどいのはeJapan関連で、実際に役所の窓口に行ってみれば前世紀となにも変わらない光景を見るだろう。これは委託先の能力しだいで到達できるところが決まってしまうからだ。進展がないのは委託先の選択が間違っていたことになる。
ネットがこれだけ発達すると、多くの人に使ってもらうべきサービス開発は、ソーシャルな形で企画・開発・実験・運用が行なわれるものが、最も支持されるものとなるのであろう。