投稿日: Aug 22, 2012 12:56:18 AM
ダメになるシナリオから脱出したい方へ
日本の電気のメーカーの大幅なリストラが頻繁にニュースになるが、この10年ほど有効な手が打てなかった経営者のていたらくが指摘されるとか、モノつくりへの固執という時代に合わせて自分を変化させることができない日本人気質のようなものが指摘されている。電気製品でも、熱くしたり冷やしたり、モーターをぐるぐる回すようなことは今でも日本は得意で、世界で1級品を提供していると思うが、電子系になると基本設計はアメリカに負けるし組み立てはアジアに負けるようになって、出番がなくなってしまった。これはAppleがiPodに社運をかけるほど真剣に開発に磨きをかけたのと、Sonyが取り組んだ姿勢との差のような気がする。Sonyの取り組み姿勢はアジア勢ならみんなできるようなレベルであったのであろう。
Appleも商品開発の過程で失敗がないはずはなく、社内的にはボツもいっぱいあるのだろうが、Steve Jobsの崖っぷち感をもった統率力で完成度の高いものに絞り込むという過程をAppleの開発者は見てきた。日本の電気メーカーでは頭の古いトップ層が気にする販売店のウケや広告代理店の意見あるいは競合メーカー製品とのスペック比べなどなどが、尖がった製品を考えるよりも優先されてしまうのだろう。こういうことをしていると、全く新しいコンセプトの製品開発は後回しになってしまうだろうし、安売りの真剣勝負の場ではアジアのメーカーの方が勢いがあることになってしまう。
今の日本はメーカーに限らず多くの業界が前にも進めず後ろにもさがれずという状況で人員削減しか乗り切りようがないという判断なのだろうが、次第に事業を縮小していってダメになるシナリオと、新しいことにあたって砕けるシナリオのどちらかを取るしかない。以前いた組織でもダメになるシナリオは見えていて、それに対して新しい方向に舵を切っても成功する確率はそれほど高いとはいえない状況だった。しかし同じダメになるならば、ダメになった後の個々人の行き方(再就職とか人生)にプラスになるような選択をするべきだと思った。
過去から産業の新陳代謝を見てきたことを踏まえると、需要が無くなっていく分野の技術やノウハウで再就職することは困難なわけで、むしろ事業的には失敗していても、これから活きる技術やノウハウで何らかのチャレンジをしてきたことが自分の行く道を拓いていく。それは頭の中のことではなく、お金にはならなくても人脈とか市場との接触の経験を積んだからである。つまり新規事業分野というのは実は企業が単独で開拓するようなものではなく、いろんな立場から関わった人の努力の総和で立ち上がるものなので、まずはその一員になることからはじめれば、個人としては組織を移りわたりながらでも成長して収入を得ていくことになるはずである。
残念ながら日本では未だに、良い学校を出て良い会社に終身雇用されたいと思う人が多いので、ベンチャー企業に飛び込むことをためらう若者もいる。しかし若いときに新しいことにチャレンジして失敗した経験は必ず将来の資産になるはずである。