投稿日: Jan 18, 2012 12:34:27 AM
Amazonに対抗する方法はあるかと思う方へ
AmazonJapanの社長談話からは、日本への電子書籍Kindleの上陸はそんなに急いでいないな、という雰囲気が感じられた。以前も記事『Kindle上陸見送りでも嵐はおさまらない』でAmazonはポリシーを曲げないだろうことを書いた。Amazonの考え方は、私が想像するに、コンテンツが王様でそこに消費者がひれ伏して「私に見せてください」と懇願するような出版モデルではなく、売買のマッチングを提供するのがAmazonであって、Amazonの強みは売買の双方にとって負荷に少ないプラットフォームを作り出すことで、他よりも安価に提供できるようにしている。だからコンテンツ提供者が個別にどんな注文をつけようとも、プラットフォームの機能を変更するわけは無いだろう。
日本の電子書籍にかかわる出版社も制作会社も、過去に流通のことは門外漢であったので、今は主にフォーマットとかオーサリング方法の話が多いが、ビジネスとしてデジタルとネットで激変するのは流通なのだから、電子書籍化で流通がどうなるのか、また自分はそこでどのようなビジネスができるのか、というのが最も真剣に考えなければならない事柄のはずだ。しかしビジネスモデルに対する考察はなれていないので、今なら自分のWebでも有料コンテンツを売ろうと思えば売れるにかかわらず、あまり工夫は見られない。
ちょっと例えとしては離れてしまうが、農林水産省の発表では産地直売所数は日本に1万6,816施設あり、この5年で2割増えた。一方で農業就労者は2割減っているので産直の比重の高まり方は異常である。日本農業産出額は8兆円強であり、産直、直売所の売上高はもうすぐ1兆円になる。この産直1兆円の過半数は当然ながら農業で、Amazonで野菜が買える時代である。やる気のある農家は農協との付き合いとは並行して、付加価値のある野菜を作って、自主的な流通を試みている。記事『自立したタネから可能性の芽が出る』では農家と新聞販売店のコラボの話をとりあげたが、農産物作りにこだわりのある人は、同時にいろんな『小さな流通』に取り組んで生き残ろうとしているのである。
メディアのビジネスをデジタルで行う場合の課金や決済は多様なので、コンテンツの内容や利用のされ方によって一律にならないだろう。つまり紙の本なら学術書もエロ本も同じ紙の束であって、同じような配本や陳列ができたのが、デジタルコンテンツでは見せ方や売り方が異なってしまう方が自然なのである。だから出版の分野や利用層ごとにビジネスモデルを開発するべきであろう。電子出版の最初の頃から農文協のようなところは独自の有料モデルを作っていたことが思い出される。もしこういうコンテンツにふさわしい出版プラットフォームが作られない分野があったなら、それは著者の自主出版に流れてしまうだろうし、そういったロングテールはKindleなどが吸収していくであろう。