投稿日: Nov 30, 2013 1:7:29 AM
農家は縦割り行政の被害者
TPPで最も揺さぶられているテーマに日本の農業があり、特に今まで放置されていた米作り政策が破綻しようとしている。しかし補助金に頼らないようにと議論されている内容は、転換・集約化・強い農業など40年間同じことである。要するに当然やるべきことをやっていなかったことを改めて感じるわけだが、当事者の座談会がメディアで採り上げられると、やはり同じ議論を今でも繰り返している。つまり議論の視点が間違っている。農業議論自体に手遅れ感が満ち満ちている。
間違いの第1は、ステークホルダ全体を含めた視点が欠けていることだ。農地の利用は国土の管理の一部分なので、日本にどれだけの農地を割り当てて、どれだけの生産をするのが適切なのかを国がシミュレーションしていない。生産に適した農地の利用と、過去の米作りの継承は別問題にしなければならない。農家の高齢化はもう選挙の票田としての意味も相当低下していると思う。
また小さな田んぼの並んだ田舎の風景が美しいだとか、棚田が日本の文化だとかいっても、旅行者の写真の被写体のために農業をしてくれる人は居ないのだから、それらは好きな人に任せて産業としての農業からは切り離すべきだ。
日本の風土や文化としての農村の価値は、それを大切に感じる人自身がすべきことで、都会から移住してでも自給自足をして暮らしたい人を斡旋・支援することが起こるだろう。ある山梨の村に行ったら、住民の半分は東京から移ってきた芸術系の人であったことがあった。別荘などでは支援がされないが、知り合いはちゃんと住民登録をすることで水道もひいてもらって、ログハウス似の家を建てて住んでいた。
今のIT時代ではそこに住んでいてもそれほど不便ではないようだ。そこは交通の便も車で町まで行くのに何時間もかかるわけではないので、そういったところの半農半在宅勤務のような生活もあるかもしれない。
間違いの第2は、農業を栽培だけに限定しすぎて、うまい米を作って価格の維持を何とかしたいという話しかないことである。日本人が好む旨い米は幻想であって、現に外食産業は輸入米をどんどん使っているが、それで客を失うことにはならない。今家庭では電気炊飯器で米を炊いていて、それで米の味見をしているのだろうが、業務用にはもっといろんな炊き方があって、輸入米でもいろいろな工夫がされていると思う。
もし外食産業が直接輸入米を買い難い状況になったら、産地国に米の加工までやらせて、半調理品として米加工品を輸入するようになるだろう。
逆に農家は生協や外食産業からの委託で生産をすることも増えているのだから、農業の延長に農産物加工もするような産業の拡大をすべきである。それも机上の空論ではなく、都会の販売先とパートナーシップでビジネス開発をするべき時だろう。それが遅れると益々海外の半調理品が増えてしまうだろう。
第1のシミュレーションに即して、例えば国土の保全・維持管理のために河川の改修と灌漑の水源など利水と農業をセットに考えることは弥生時代から行われていたことなので、農家への補助金は米の価格の補填としてではなく、利水や自然環境保全に役立っている分を国から公費で請け負うような考え方が必要だろう。
総じて日本の農業政策が前に進まないのは発想の狭さゆえであり、密接に関連した外食産業や小売業を見るだけでも今必要な農業の姿の答えは出ているといえる。