投稿日: Dec 21, 2015 12:51:56 AM
cool Japan というと日本のサブカルの代名詞のようなものであったのが、国の施策となると実質的な中心は日本食になったようだ。確かに海外の日本食の評価は高まり、日本からの食材の輸出も増えている。一方でサブカルの方は一休みという感じではないだろうか。そもそもサブカルはメジャーではないコンテンツなので、商売として成功するのはかなりマグレなものである。そういった「掃き溜めに鶴」のような場合に cool!! と叫ばれるのであって、決してcoolは尊敬を込めた形容ではなく、「コイツやりおるな!」みたいな上から目線で見下ろしている中での発見を言っているのであって、クズの山が前提にあるからである。だから自分のことを cool と形容する cool Japan はアタマがおかしいとしか思えず、まさにcoolなのかもしれない。
それとは別に日本食は文化的に尊敬もされているように思える。そもそも日本食という決まったスタイルがあるわけではなく、各地方に残る伝統的な食文化を総称して日本食と呼んでいるので、実態は大量生産大量消費とは対極的な地産地消的ローカルなスローフードである。
そうすると尊敬されているスローフードと、大量に輸出されようとしている日本食とは両立するのかどうか問題が悩ましい。記事『日本食が提示する課題』では、実際の日本の社会の中では漁業の乱獲問題や加工食品が増える矛盾が浮かび上がっていることを書いた。
日本食の原材料が遠洋漁業や輸入に頼っていて、それが国内需要を満たすためだけでも、世界的には自然環境保護の視点で問題にされるわけだから、乱獲前提で世界に輸出する日本食ならば、今後ビジネスとして問題を引き起こすことは明らかだ。以前から鯨やマグロは世界的に漁獲制限が厳しくなってきたが、他の食材であっても大量消費につながっていけば次々に規制されていくだろう。
北海道では鮭の人工ふ化と幼魚放流を10億匹しているそうだが、人工ふ化では川に戻ってくる比率が下がって衰退につながり、やはり自然な産卵環境を増やさなければならないという話もある。要するに自然のキャパシティを越えた収穫は望むべきではないということかもしれない。このままでは日本の養殖技術も輸出分を賄うほどにはなりそうにない。
日本食が文化として世界に広がるとすると、日本のローカル食と同様に、それぞれの地域でとれた素材を利用するスローフードの加工法になるのかもしれない。そこでは従来は食材とみなされなかった海藻や海洋生物も利用されるとか、発酵食品とかで食卓が豊かになるにしても、日本からの輸出のターゲットがそう広がるものではない。ビジネスとしては高級日本食レストランが世界の各地にできるとか、調味料のような加工食品が輸出できる程度なのではないか。
cool Japan のサブカルも日本食も内包した矛盾を解決できないままアドバルーンをあげているようにも思える。
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