投稿日: Oct 18, 2011 12:17:36 AM
PDF時代の終わりを予感する方へ
私が駆け出しの頃、まだアナログな写真製版の時代に、製版に関する簡単な本を作ったことがあるが、それは以降20年にわたって販売されてた。その後デジタルの時代になってからも単行本には関わったが、本の生命は数年~2-3年とだんだん短くなっていき、仕事の一部として、あるいはアルバイトで年に1つか2つは手がけたが、仕事として作る専門書でもヒットエンドランのようなつくりになるので、構成から執筆、校正までじっくりやってられないで、作った後にも不満が残ってしまう。だから自分で考えていることを本にしてやろうという気は次第になくなっていった。手間かけてもコストが合わないなら、日本の本つくりは終わっている感じがした。
専門書でもDTPのようなトピックなテーマは短命でも、もっと抽象的概念的な内容の専門書にすれば寿命は長くなるが、実利的ではないので1000部くらいしか売れないかもしれない、ということになる。それでも出す意義があるから出版することはあるがビジネスはまわらない。そんなことばかりはやってられないのだが、本の体裁は捨てて報告書の体裁にすると、自分たちでWordで書いたらそれで制作はオシマイで、造本設計もなく、印刷も安いし、原稿料も安いので、500部でも採算が合うというか、出版行為が調査研究活動のタシになる。専門書であろうと報告書であろうと、内容は同じなのである。
そのように見ると、出版社以外に相当多くの出版物がすでに世の中に出ていることがわかる。報告書が書籍の出版と異なる点は、だいたい配布先とか需要のあるところが決まっていることで、東販日販などの全国流通に流す意味がないことである。
そのように流通ルートが不完全なために、情報を手に入れたい側からすると、いろんな白書や報告書がありそうに思えても見つけにくかった。今はそれがネット上にPDFで置かれている時代である。コスト削減のために紙の報告書を止めてPDF一本にしてしまったところも多くあり、検索にもひっかかるから読むのだが、PDFは拡大・スクロールしなければならないので、どうもしっくり読めない。
こういったPDFは大体A4の報告書なのだが、これは画面をはみ出るか、全画面では文字が小さすぎるということになるので、もし印刷して配布するつもりが無いのならば、紙を前提としたレイアウトをする必要はそもそも無い。かえって迷惑である。ePubのようにリフローするものはデバイスに合わせて表示されるので、拡大・スクロールなしでも読めるようになる。以前の記事『もうひとつのePub』の Smart ePub のようなツールは、商業出版物よりはビジネスや学校での自主出版に向いていそうなもので、過去の印刷物ありきの時代が終わったことを象徴するものであると思える。
残る課題はeBookの流通で、KindleやiBookStoreのような商業的な仕組み以外にも、オープンで横断的なメカニズムが求められる。