投稿日: Jan 11, 2011 10:8:46 PM
経験が頭を固くすると思う方へ
特にメディアに関するビジネスは、リアルの世界でトップであったところが、ネットではトップにならないことが多い。マーケッティングでは「ブランド」の重要さがいわれるが、ブランドよりもネット上での利便性があるからだろう。オンラインのモールではWebの初期に商社が手がけたものがダメになって、楽天のようなベンチャーが伸びたのは、どんな店がどのようなものを売って、誰がどう買うかという取引のイメージが、リアルビジネスとは異なるものを商社は描けなかったからだと思う。商社は既存のブランドが強いと考えたのだろうが、ネットでの伸びしろはリアルでは埋もれていたところだった。ネットは潜在的な需給のマッチングの可能性を、実際の取引として成立させたといえる。商社はどちらかというとB2Bの供給側に強く、ロングテールには弱いので、生活者の前面に出るようなところには力を出せなかった。
ブランド依存や、プロが考える「おれたちが一番」に思い上がりがあって、実際には弱点があると、ネットで攻める側から見るとチャンスがあることになる。広告批評という雑誌が1昨年に廃刊になったが、そこではTV全盛期が終わったという認識がTV広告側の人から総括されていて、この人たちは社会をちゃんと見ていたのだと思ったことがある。しかし多数のプロは自分たちがやりきれていなかった弱点を忘れている。「出版は日本の文化を背負っている」というのはある面では肯定できるが、そんな発言をあえてすることは驕りであり、自分の弱点から目をそらせていることを表している。
こういった経験主義が「老害」よりもタチが悪いのは、既存ビジネスをしている企業の経営層だけにあるのではなく、新入社員から刷り込まれている、あるいは企業のブランドとして採用時から効力を発している思い上がりであって、それを組織内部からチャックしたり是正することが困難なことが多い。よくあるのは外部に依頼したコンサルティングの結果として弱点を指摘される場合があるが、その後で対策ができるかというと、何も出来ずに経験主義で自滅することが多いだろう。リアルビジネスの勝者のほとんどがネット上では経験主義が通じずに苦戦している。
経験主義を脱却するには、何しろ潜在顧客とのコンタクトをすることで、そこからの声を真剣に聞くことであろう。ロイヤルカスタマの声を聞いて自己満足するよりは、客観的な声を聞いて丸裸の自分の姿に触れるほうがインパクトが強いはずだ。新聞社が案内広告をリクルートに奪われたのも、出版社が読者からのフィードバックを持てなかったのも、こういったコンタクトを軽視していたからだ。唯一漫画雑誌だけが読者葉書を頼りに企画の舵取りをして伸びた。漫画雑誌そのものが退潮になったので今は通用しないかもしれないが、ネット上ならフィードバックを多く設定できるので、ビジネスモデルの中にそういった要素を組み込んでおいて、仕事に携わる人がいつも新鮮な感覚で居れるようにすべきだろう。