投稿日: Jan 05, 2012 12:24:52 AM
デジタルメディアはアナログを真似るのかと思う方へ
記事『コンテンツ提供のユーザインタフェース』では一種の電子書籍サービスであるニコニコ静画のことを書いたが、考えてみると動画で成功した後に2011年11月から静止画配信を始めるのは逆ではないかと思われるかもしれない。そもそもリアルタイム可能なTVに対して録画を共有するニコニコ動画があるのに、生放送を始めたりするのも逆であると思われるかもしれない。これらは以前からよそにもあるものなので、動画配信が手詰まりになって、何でもかんでも手を広げたような印象があるかもしれないが、サービスを多面的にして横断的な使い方で充実感を出す考えがあるのだろう。利用者には個々のサービスしか知らされないが、大きなメディア戦略がありそうな気配がある。
すでにいろんなメディアを追加していったことで、ニコニコの有料会員数全体は増え続け、150万人を突破したという。この勢いで行けば2012年には会費だけで優に年商100億円は達成できそうである。従来着メロでもYouTubeでも単一メディアにフォーカスをした配信をしていて、それは技術上のコアを活かしたサービスであったのだろうが、そういう単一メディアの時代が終わりつつあることを感じさせる。ニコニコは2ch的なコメントの面白さに留まることはなく、放送、報道、出版という分野も飲み込んで発展する段階に入っている。こういったプロセスにおいて実際の利用者の反応を受け止めながら、リアルタイム性とは何なのか、コメントの同期とは何なのか、動画とは静止画とは、映像とはアニメとは、という知見が得られつつあると思う。
これは既存マスメディアはあんまり考える手がかりを持っていないし、ニコニコの中でしか分からないことである。そういった知見に基づいてメディア間のシナジーによってサービスの充実を考えていると思う。つまり常に新しいコンテンツばかりを追いかけていても破綻してしまうし、大ヒットがあっても後が続かずに沈没してしまうのがメディアビジネスなので、そのような過去の枠組みとは異なるものをデジタルとネットで作り上げないと既存メディアを越えられないと思うからだ。特に3.11以来はリアルタイムメディアのダイナミックさが見直されたので、ネットでもリアルタイム性を取り込む方向にある。
また2011はニコニコの追い風というのがいくつかあった。3.11の際にはテレビだけでは情報が少なすぎるので、Ustreamの配信が使われ、NHKも対応していたが、日本海溝をまたぐ海底ケーブルは半分が仕様不可能になったような時だから、日米の回線容量は減ってしまい、アメリカにサーバのあるサービスでは回線がパンクする恐れがあったので、日本にサーバのあるニコニコにNHKも対応するようになった。つまり大容量の動画時代においてはアメリカのデータセンタへの一極集中は好ましくくなく、ストリーム配信業者がノードのところどころでのキャッシングをしていることから考えてもローカルな分散データセンタの役割は大きくなると考えられる。
ネットは時空を越えるというのは、過去の時空に縛られたアナログメディアからみればそうなのだが、越える必要がないとか、越えない方が特色を出せることも次第にわかってきた面もある。要するに総合的にメディアやコミュニケーションを考えることは始まったばかりなのである。