投稿日: Oct 09, 2015 1:18:28 AM
ノーベル賞の大村智先生はスポーツが得意であったそうで、ゴルフもシングルプレイヤーだった。ノーベル賞のキッカケになった菌の発見はゴルフ場の土からと報道されていたが、土をとるためにゴルフ場に行ったのではなく、ゴルフに行っても土の採取をしていたということだろう。つまり大村先生にとっては土の採取に日曜も祭日もなく、生きている間は際限なく土の中の菌と向かい合う生活だったことが伺われる。
そういう中で1000回に1回か、1万回に1回かは知らないが、普通のビジネスでは可能性ゼロとみなしてしまうような確率でも何がしかの手がかりをつかんで前に進めるのがこの種の学問というか研究なのであろう。これは分野が変わっても似たような面があると思う。
そろばん勘定の上で成り立つ企業活動と、研究調査活動のギャップを見る思いである。企業が研究開発をする場合には、土の採取の原価がひとつ幾らという計算で管理するのではなく、それは給料に込みで延々とやってくれる人を雇わなければならない。
つまり研究開発型の企業とかそういった部署は働く動機とか日常の暮らし方という面で一般サラリーマンとは相当異なる環境を用意しなければならないわけだが、それが思うようにはいかない理由は、企業文化が関係している。折角優秀な人材を集めて研究所を作っても、企業に余裕がなくなれば急にすぐに役に立つテーマを追求させられ、長期的な視点での継続した積み重ねがフイになってしまった例が多い。企業文化が追いついていないのが日本の現状だろう。
ただ研究者個人の資質としては日本人は結構向いているかなと思う。明治維新で文明開化の折に、短期間のうちに西洋文明の追従ができたのも、農業の改良とか伝統工芸の中でつちかった個人の資質が活きた例で、今でも世界に例がないものが日本には多くある。しかし農業とか伝統工芸は個人技とかに留まりがちで、産業には結びつきにくかった。それは日本企業の組織の在り方が、そういう個人技と相性が悪かったからだろう。果たして日本の企業は個人技をうまく活用できるようになるのだろうか、というのが今後のテーマだろう。