投稿日: Feb 24, 2016 1:27:49 AM
電通の「2015年 日本の広告費」が発表された。インターネット広告は11%ほど伸び、他の広告のマイナス分を補って、トータルでは前年売り上げを割ることにはならなかった。微妙に前年を上回っている点が怪しく、どこかで「絶対プラスにせよ!」という号令がかかっていたように思えて仕方がない。もしマイナスが出たらアベノミックス効果もまた疑われてしまう。何しろ広告は経済の浮沈とともにあるのだから。
既存メディアが下がっていることは皆承知だが、「実態はこんなものではない!」という思いの人は多数居るだろう。なにしろ雑誌は前年比2.3%減でとどまっているのだから。雑誌が落ち込まないように政界・芸能界がスキャンダルを提供し続けているわけでもあるまいに。
SP広告の主体は印刷物であったが印刷メディアでプラスに動いているものは何もない。おそらくデジタルサイネージは、屋外、POPとか展示・映像ほか、に入っているのだろうが、これらだけがプラスに動いている。
トータルで考えて、2014-2015年の傾向としてみとれるのが、印刷に関係した広告が全体の半分を割ってしまったという、紙・非紙の逆転現象である。これはもう戻らないであろう。デジタル印刷による新たな工夫はされていっても、トータルで紙メディアの低下分を補うことにはならないだろう。
それには理由がある。紙媒体は一方通行でレスポンスが分かりにくいからである。広告におけるメディアの役割はばら撒くことよりもコミュニケーションに比重が移るので、オーディエンスの反応を見ながら短時間に次の手を打っていくことができるメディアに金が使われることになる。
インターネット広告も伸びてはいるものの、売上の3分の2は運用型といわれるデータ処理を伴うものとなっていて、前年比20%の伸びがあるのに対して、制作費の伸びは5%にしか過ぎない。運用型の場合はデータ処理を行うプラットフォームのビジネスになって、アナログ時代のビジュアルを主体とした企画制作型の広告ビジネスとは大きく異なる。そこでは制作は表現物ではなく素材的なコンテンツになっていき、したがって高い単価は取れなくなるだろう。
ここしばらくはプラットフォームによる運用型が伸びるにしても、それが終着駅ではないことも意識しておくべきだ。(関連記事『トランザクションは宝の山』)
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