投稿日: Mar 24, 2016 12:59:22 AM
以前から危惧されていた話だが、中東情勢が不安になると難民がヨーロッパにやってきて、その中から中東のISのような武装テロ組織にシンパシーを抱く若者が中東に行ったりヨーロッパに戻ることで、ヨーロッパも不安定になっていくことが、現実のものとなりつつある。
これは歴史的なボタンの掛け違いのようなもので、少なく見積もっても過去何十年の過ちを是正しなければならないので、今後も何十年かかるだろう。その間にヨーロッパ各国は国政選挙が何度もあって、政権が交代し政策があちらこちらにブレるので、非常に対応能力が危ぶまれる。
元はといえば第2次大戦後にイスラエルを建国して、そこに世界に散っていたユダヤ人を帰らせようということだったのだが、ユダヤ人シオニストは中東戦争を起こしその地に住んでいたアラブ人(パレスチナ人など)を追い払って難民化させ、周辺の国や欧米に散らしてしまった。欧州から見ればユダヤ人からアラブ人に入れ替わって、かえって悪くなった。
そして周辺国の難民キャンプで育った人の中からゲリラとか原理主義が出てくることになる。今のゲリラの指導者は難民化と戦乱の中で生まれて育った人達なので、欧米や日本のような平和な環境で育った人間とは感覚がいろんな意味で食い違っていても不思議はないだろう。つまり我々にとって彼らの気持ちは理解しがたいものに違いない。
平和な世界では一人の命は地球より重いとかいうが、彼らはそんな話は聞いたことが無いだろう。だから人権や人道主義を振りかざしても彼らと対話することはできない。彼らが納得するものはただ一つ、自分たちが暮らしていける場所が得られるかどうかであろう。
パレスチナ難民の時代から、イラク戦争とかアフガン、シリア内戦、ソマリア、イエメン、というように新たな難民が続々増えていくと、難民100万人に1人が自爆テロをするようになっても、今くらいの頻度でのテロ事件は起こってしまう。これを逆に言えば、難民100万人が安心して暮らせるようにしてあげないと、1人のテロリストを封じ込めることができない計算になる。
これは欧米には難しい課題だ。難民の99.999パーセントはテロとは無縁なのに、テロ事件が起こると感情的に難民を助ける気が失せ、難民の扱いを悪くすれば、むしろテロリストを産む温床を拡大することになりかねないからだ。太陽と北風の例えがあるが、太陽政策をしようと思えば、何しろこつこつと何百万中東難民に安定した生活を与えることしかない。
しかしイスラム社会の安定を望んでいないイスラエル・アメリカの工作をどうやって止められるのであろうか?また地上に僅かに残っている王国が中東に集まっているようにイスラム社会も政権が脆弱で中長期的な政策が出来ない。イスラム社会の近代化というのも並行して進まなければ安定化にはなりえないという課題もある。おそらく中東以外の安定したイスラム国の助けがもっとも有効になるだろう。
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