投稿日: Jul 03, 2012 12:29:29 AM
出版ビジネスの再構築に取り組み方へ
Amazonと価格問題をとりあげた3月4月のミーティング以来、Ebook2.0 Forumと共同開催の形で、ゆるゆると電子出版再構築の研究会 オープン・パブリッシング・フォーラム を始めている。6月には『出版ビジネスをサービス指向で…「こえほん」』(報告記事)というタイトルでデジタルメディアによるサービスをテーマに話し合った。研究会は四半期単位に大きなテーマを掲げていて、1期は「市場:商品特性/サービス、価格/流通」に関することをとりあげるので、残っているのはマーケティングと商品特性である。それらに関する現在検討していることはだいたい以下のようになる。
本のマーケティング
記事『本作りだけでビジネスはできない』では、日本の書籍流通が「パターン配本」という思考停止によって出版社も書店も読者と向き合うことが不十分になっていることを書いた。そこでトップダウンの書籍流通とは逆に読者ニーズから本を蘇らせる復刊ドットコムがどのようなことをされているのかをお聞きしてディスカッションを7月25日にすることにした。これは紙の書籍やオンデマンド本であるが、読者ドリブンな出版というのはデジタルメディアで拡大が期待されている分野なので、重要なテーマである。
またマーケティングをするためのインフラが世間一般に比べても劣っているのが日本の出版業界で、当然ながら業界の統計とか売り上げデータの分析はあるものの、それが今日のビジネスをするのに十分か(むしろ何が足りないか)ということと、それを個別の事業体がどうやって埋め合わせて事業を進めるのかという検討が必要である。日本のデータの見直しと、一方で出版が拡大しているアメリカではどのような指標やモニタリングがあるのかを採りあげたい。これは8月に予定している。
商品特性
書籍の形状は矩形の紙を束ねたものであるが、その内容は人間の行為のすべてに及んでいるために、製作されるプロセスや利用のされ方は千差万別である。それらは一般には図書分類のような分け方をされるが、バリューチェーン的な視点で整理するとどうなるだろうか? その手がかりとして、例えば知の循環を担っているジャーナル(学術誌)などに焦点をあてて、査読のオンライン化の進捗や、それによってどこにどのような価値のシフトが起こっているかを考えるとか、あるいはWiki編集のようなオンライン編集が組織内文書で使われている様子とか、パッケージ型の電子辞書がオンラインでどのように姿を変えたサービスになるかなどのうちから、9月のミーティングを決めようとしている。
読書端末のグローバル化が間近で、再び電子書籍がニュースを賑わすのだろうが、それらはまだ過去の出版のバリューチェーンを引きずったものであって、商材そのものは「なんだ」と思われるのが関の山かもしれない。しかしそこにはEPUB3によって起こる端末・ビュア・リーダに拘束されないデジタルパブリッシングという大きな第一歩があって、そのロードマップの上で新しいバリューを提示することが求められている。それに対応するのがここで言う電子出版再構築のオープン・パブリッシングである。
関連情報
出版のグローバル化を考えるセッションを行います。 7月6日(金) 15:00-16:30(90分)