投稿日: Jun 03, 2010 1:32:31 AM
iPadとPCの間で戦争になるかと思う方へ
Wall Street JournalのイベントD8にAppleのスティーブ・ジョブスが出て、後にMicrosoftのスティーブ・バルマーも出てiPadやPCのことをしゃべっていた。別にそこで喧嘩のようなことが起こったのではないのだが、PCの定義が揺らぎだしていることがわかる。ジョブスはiPad開発のいきさつの話と関連して、みんなが農業をしていた時には自動車は後ろに荷物をつめるトラックのことだったけれど、現在では荷台はいらないので、トラックはニッチなものとなったというたとえで、iPadのようなものが汎用品としてPCに代わるようなことを言った。一方バルマーはiPadはそれでもPCだと言った。それはやはりGeneralPurposeだからという理由をあげている。両者とも汎用品がまだこれから伸びるから固執しているのである。
共通しているのはiPadなら汎用品であることだが、バルマーの方が汎用品の範疇が広くとっており、ジョブスはその中でも今後は多数派になるものを汎用品と定義している。これはこれでいいのだが、もうちょっと状況をわかりやすく例えるならば、情報生産手段として使われるのがワークステーションのようなニッチ製品で、情報消費手段として使われるのがiPad様のものといってもいいだろう。つまり今までのPCというのは(Macも含めて)情報生産側と情報消費側のどっちにも顔を向けていたものであったのが、今のコンピュータの進化の段階は両者が分化して最適化を図ろうというところにきていると考えられる。
iPadが示しているものは従来のPCよりももっと直感的でシンプルな操作ができるものであるが、逆にショートカットキーでがんがん仕事をするものではない。他方PCといえばこの10年で昔のUNIX以上の高度化をしたのが、それをメリットと感じるユーザはそんなにいない。仕事でがんがん使うにはもっと生産性の上がる工夫を求める声がある一方で、数からすれば「そんなのいらない」というユーザが増える。UltraMobileでもiPadでもARMの系列のCPUで浮動小数点には弱いが「それで十分だ」というような、スペックダウンも起こり始めた。
さてパソコンが情報生産者向けと消費者向けに分化していって本当に発展するのだろうか? 技術面ではそうだろうが、価格的には厳しくなるだろう。iPad様のものは数は爆発的に増えるが競合で部品代に毛が生えたようなものになり、iPadのような付加価値もOS代もとるのは難しい。アプリはみんなネットの向こうにあって、インストールはされない。ASP的なものしか生き残らない。ローカルサーバやワークステーションもまだまだ増え続けるが、相対的にはクラウドでのサービスが充実してくる。ハードウェアは本当に水道設備や蛇口のようになって、アジアに任せることになろう。こう考えるとアメリカ人がビジネスとして興味を持つのはデータセンターに比重が行くことが納得しやすい。