投稿日: Jan 27, 2012 12:36:17 AM
グローバルな視点を持ちたい方へ
日々のニュースを耳に挟んでいるかいないかの違いは、その人の意識形成に大きな違いをもたらすわけだが、マスメディアというのは記事『情報を見分ける力』に書いたように何らかのバイアスがあるので、メディアリテラシーが必要であるとともに、そのメディアリテラシーは何らかの情報や知識というものをベースにしているので、その情報や知識をどのようにして得ているのかの違いに左右される。ということは結局堂々巡りのようなもので、その人の生まれ育ちによってニュースの受け取り方が異なっているということになる。人間は生まれ育ちからくる運命から逃れられないものなのか?
近年は海外旅行をする人が増えて(最近の若者は金が無くてあまり行かないとも聞くが)、日本で生まれ育った感覚だけでなく、カルチャーショックを受ける機会も増えたはずだ。テレビの番組でも地球上のいろいろな暮らし方を、単なる日本を基準にした比較とか好奇の目で追うのではなく、人間とは…という視点で問いかけるものが増えているように思う。昔から書籍においては見聞録の優れたものがあったわけだが、それに近づいているように思える。マスメディアの中でもこういったクロスカルチャーなコンテンツは評価できるし、その中で養われる意識というのは、個人が生まれ育った文化の束縛から解き放つ効果がいくらかはあるだろう。
クロスカルチャーは今のところ教育のカリキュラムの中にはないが、日本がグローバルなビジネスをする際にはもっとも重要なことだ。ガラパゴスといわれるような日本国内だけにしか通用しない考えでは海外ビジネスができないどころか、黒船対抗もできないからだ。特にITやデジタルメディアのビジネスはアメリカの法律や常識が日本にも大きな影響を及ぼすようになっていて、TPPで著作権が云々というようなニュースが多いが、これらこそニュースの裏側を良く知らないと判断できないものである。記事『なぜMegauploadは潰されたか』では、表面的には違法アップロード・ダウンロードの問題だが、逮捕されたのはアメリカのIT産業のように司法取引のような協力をしないで、アメリカのコンテンツ産業への挑戦をしている人たちだからということを書いた。
日本はJASRACを代表に法制化が取り締まり強化になるだけという印象があるが、アメリカは脱税には日本よりも厳しい半面で、課税されないチップが日常横行しているように、規制と黙認が奇妙にバランスしている。チップ収入の方が時給よりも多いようなサービスもある。これは著作権に関しても権利保護とフェアユースが同居していて、たとえばパロディのような2次創作があっても、本家に何の金銭的損害も与えていないものは存在が許されるとか、何よりもYouTubeなど権利問題を事前にクリアしなくてもアップできるようになっているので、コンテンツビジネスの底辺からの活性化が可能になる。
今日のマスコミの力量低下はニュース報道などジャーナリズムの品質低下でもあり、ニュースはソースをそのまま流すだけであるが、本当ならば一度自分でニュースの背景を捉えなおして自主取材などをして、ニュースソースに含まれているバイアスを検討した上で再構成してもらわないと、人々の意識を広げるジャーナリズムとはならない。この欠落部分をソーシャルメディアが補いつつあり、日本のコンテンツビジネスを育てる上でも重要な役割を果たすだろう。