投稿日: Aug 16, 2010 11:23:3 PM
コンピュータ利用者は保守的と思う方へ
AppleのSteveJobsの一挙手一投足がニュースになり、熱狂的な支持者に囲まれているようには見えるけれども、出版社によるとSteveJobsに関する本はそれほどヒットはしないようで、MacOSXのシェアである5%強というのは、案外評価としては妥当なものかもしれない。つまりSteveJobsのことを話題にする人々がそれほどSteveJobs本人のことを理解しようとはしていないし、逆も真なりで、SteveJobsもApple製品ファンに対しては冷たいなと思う面もある。いつもプレゼンをする時は最高の製品と表現するが、当然ながら新製品といえども与えられた条件下での妥協の産物であって、製品そのものはベストを尽くすのが関の山で、最高と言ってもよいのはデザインであったりコンセプトであったりする。
どこかにApple製品のコレクターも居るに違いなく、そこには不発や短命の製品もいっぱいあるであろう。SteveJobsは過去には無いような製品を世に出したがっていたので、必ずしも大もうけ狙いとは考えられず、如何に過去と異なるかというインパクトをデモしたかったのだろうと思われる製品もある。ファッションショーのようなものである。しかし現実社会で仕事をする人や製品を売って生計を立てる人にとっては、「過去との断絶」よりも「これからの成長」の方が大事なので、いくら斬新でも将来孤立するかもしれない製品はなかなか担いでもらえない。SteveJobsはテクノロジーには疎いので、技術の進展を考えると外しているかな、という製品もしばしばある。SteveJobsの冷たい面というのは、外した製品のサポートは簡単に打ち切る点にある。こういう面は保守的なコンピュータ利用者がAppleを避ける理由にもなる。
Appleには新しいものを創り出す力があり、一方Microsoftには古いものを壊す力があったことを、『創る力と、壊す力』で書いたが、SteveJobsは「過去との断絶」を求めている人に支持されていて、そのパーセンテ-ジは冒頭くらいなのであろう。この考えはコンピュータという実利実業の世界よりも、iPod→iPhoneのようなコンシュマープロダクトでブレイクした。このことで覚醒してiPadでコモディティ化したコンピュータの世界を攻め直すのと、映像、TVの世界へのチャレンジが始まったのだろう。ビジネスモデルとしてはデバイスはアジア製も参入しにくいくらいの安価に先行して提供し、収益はiTuneStore、iBookStoreのようなコンテンツ流通と、広告モデルを考えているが、電話ビジネスはどうなるのか? あまり考えていないかもしれない。
一方『創る力と、壊す力』でも述べたようにSteveJobsはコンピュータのレガシーと戦う気が無いので、そこはビジネスとしては機会損失である。過去から86系CPUでMacOSが使えるように、という要望もあったが、それによってMacファンを増やすことよりは次の展開に進む方をSteveJobsは選んだのだろう。考えてみるとintel8086は当初から優れた設計であるとは言われなかったCPUであったが、86系は20年ほどもクライアント市場を支配し、WindowsNTも姿を少しずつ変えつつ15年以上使われた。ここから外れたSunもLinuxクライアントもビジネス機会は無かった。MacOSがレガシーとは別の道を行きつつ独立して存続し続けられたのは奇跡のように思えるし、SteveJobsも奇跡頼みではないようにAppleの舵を切っている。