投稿日: Feb 03, 2012 12:27:25 AM
広がるサービスを提供したい方へ
Webは単なる情報伝達メディアとして発展しているのではなく、商品の申し込みから検定試験まで、双方向性を活かしてサービスを提供する場となっている。つまりサイト作りはデザイン面よりも用途開発に重点が移っていく。しかし意外にオフラインの業務をオンラインに切り替えることは進んでいないか、あるいはニッチな領域に留まっている。たとえば名刺の発注はWebで行うものが主流になっても、なかなか他の印刷物の発注には波及していない。実はいろんな印刷分野にWebToPrintはあるのだが、印刷受注側の社内とかクローズドな世界に留まっていて外からは見えないので、印刷の顧客とか現業・現場にとってみると印刷は昔ながらのままに思われる。
その一方でWebの方はCMSの発達で、業務を行っている現場の方が新しく扱う製品情報をWebにのせるようなことをしている。特にケータイ向けサイトは、お店から直接情報発信ができるように考えられたものが多い。印刷物がこのようにできないのは、印刷にまつわる原稿準備やデザイン・レイアウトから校正に至るまでの制作プロセスが複雑で、それぞれにコツがあって、専門家にまかせないと品質が保てなかったからである。だからWebでどんなサービス化をしなければならないかが、ここからわかる。
つまり、業務上の必要が生じた段階で、すでに原稿準備やデザイン・レイアウトが用意されていて、Webサイトに情報をアップする程度の作業で紙面が構成されて、もし外部のチェックを受ける必要があるなら、それもネットで同時にできるようなものである。紙の校正は自分のプリンタで出すなり、その後デジタル印刷機やオフセット印刷に回して、出来上がった印刷物をどことどこに分割納品するか、あるいは宛名データに従って配送するとか、新聞折込業者に回して特定地域に配布してもらうなど、一連の作業が鉄道のように順次スムーズに設定できる仕組みである。すでに校正もメール添付で行われているように、これらの個々の業務は全部ネット経由でやり取りされているにもかかわらず、ダッシュボードのようにはまとめられていないのである。
印刷関連業務全体をダッシュボード化すると同時に、紙面制作の部分もダッシュボード化が必要で、デザインテンプレートの選択をして、写真やテキストなどのオリジナルなコンテンツを貼り付けるだけでなく、もっと前段階の「どんな印刷物にしようかな」というアイディア・ヒント・ギャラリーなどの提供から、広告の文言に関する規制にあっているかどうかのチェック、過去制作履歴、認証フローなど業務に必要なさまざまな要素を、部品として付けははずしできる仕組みも用意するべきである。それは単にDTPの代わりではなく、事業者にとって必要な業務を手助けするという中に紙面制作も位置づけないと、次第に印刷物を作ることが億劫になるからである。
今まで印刷会社やデジタル印刷機メーカーがいろいろなWebToPrintを提供してきたが、そこに足りないのは事業者が自分の事業ならではのオリジナリティを出すことを疎かにしていて、世の中で一般的にあるカッコいいデザインを真似るシステムであったり、操作の安直さを第一にしていたり、商品の売れ行きとか事業の成功とともに成長できるサービスになっていなかった点だ。カッコいいデザインを真似て没個性的なものを作ると、たとえば新聞チラシなら一緒に入ってくるであろうクリエイティブに金をかけた大資本のものに見た目で負けることはわかっている。
だから現場から遠くに居るクリエータにはわからないが、直接携わる現場の意識が反映できる方法が必要なのである。たとえば産直を一般論で語るのと、実際にそれを店頭に並べている人の感覚で表現するのとでは大きな違いがある。それを表現できるサービスを提供すれば、世の中で毎日工夫を凝らして仕事をしている人にとっては、ぜひ使って見たいWebToPrintになるのではないか。