投稿日: Aug 30, 2013 11:55:31 PM
お宝は激減した
私はいわゆるシングル盤こと45回転レコードを30年間ほど集めて(音楽メディアのからくり )、それを10年かけてリマスターした。45回転レコードは1990年くらいまでは売られていたが、今は表からは姿を消していて、オークションなどでしか手に入らない。ポピュラーな楽曲はCDになって再発売されているが、それは有名な一部のミュージシャンによるものだけで、アナログ時代の音楽シーンは実像がわからなくなっていく。そこで自分のもっているアメリカ黒人の身近な音楽であったものを編纂して、「DJの因数分解」にあるような編集方法でパッケージ化することを10年ほどやってきた。
自分の探している45回転レコードで手に入ったものは3分の2くらいで、残りのものは高価すぎて買えないか、そもそも見つからないままである。やはり機会があれば手に入れたいのだが、その機会は近年急速に減ってしまい、コレクター市場の高いものしか残っていない。
もともとアメリカのレコード集めというのは庶民的な楽しみで、新品は1枚1ドルとか黒人市場向けは50セントで売られていたし、スーパーの入り口のワゴンでは少し前に発売された45rpmレコードが10-20枚がビニールでラップされて1ドルとかで売られていた。またガレージセール・エステートセールでもダンボールに入って1箱いくらで売られる。これらの中から自分の欲しいものを見出す嗅覚を持つのがコレクターである。
このような買い方をしていると自分のいらないレコードもいっぱい溜まるので、今度はそれを売らなければならない。今でもアメリカは交換会が各地で行われているし、ネットのオークションでも売られている。オークションがどのようなものを扱うかはさまざまだが、ガレージセール・エステートセールの流れを汲むものが私の狙い目であった。
ガレージセールは引越しをする際などに、自宅で不用品を近所の人に売るものであり、日本でも近年はみかけることがある。エステートセールは不動産物件で家の中身が入ったまま購入して、前の持ち主のモノを売る場合である。
私はこれらの中から黒人音楽の関係者のものを探した。関係者とはミュージシャン、プロデューサ、ジュークボックスのディーラ、ラジオ局のDJ、などで、彼らの持ち物は一人ひとり違っていても共通項がある。こういうところにあるレコードのリストを30年間ほど見続けていると、黒人以外の人には知られていなくても、彼らの共通項となっていた音楽が浮かび上がってくるのである。それが冒頭の自分の探している45回転レコードであった。
もうすでにオークションでもガレージセール・エステートセール的な出物は稀になって、古いアナログのレコードはありきたりのものばかりになりつつある。おそらく死ぬまでに欲しいものを全部手に入れることはあり得ないが、3分の2くらいあると今まで未知であった下図の黒いBlack native music(黒人向け市場)もだいたいは見当がつくようになったと思う。今後ますます入手難になると考えると、私がこの分野のことをやってこれたことはラッキーだったのかもしれない。あとはそれを世界の誰かに継承することが課題である。
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