投稿日: Dec 16, 2015 12:19:21 AM
ヒット曲の彼方に
日本で知り得るアメリカの大衆音楽は、ヒット曲が伝搬してきたものなので、レコードの売れ行きとしては理解できても、アメリカの巷でどのような音楽芸能が受け入れられているのかを知ることにはつながらない。しかしインターネットの時代になっていろんな昔話がWebに載るようになって、アメリカの大衆音楽の世界の奥行きも次第にうかがえるようになってうれしい。自分が昔何も知らずに集めたレコードに関しても、今になって検索してわかることというのが多く、おぼろげながらに抱いていた印象が、そんなに的外れではなかったときはほっとする。
大衆音楽はダンスとともにあったことを、記事『エンタテイメントとしての歌と踊』に書いたことがあるが、もうひとつの大衆音楽の要素はショウである。このことはレコードを通じた音楽感が得てして音楽を曲調や様式で分類してしまうのとは対極にある。つまり音楽ショウではいろんな曲調のオンパレードになるわけで、この場合はバンドのレパートリーはBluesとかJazzとかPopsとかRockとかに固定されていないのが普通なのである。
写真左はワシントンDCあたりで活躍していたフィル・フラワーズという人で、音楽様式のカメレオンといわれていて取り扱いに困る存在で、日本でも無視されているのだが、このライブのレコードを聞くと彼は「ショウ」をしているのでカメレオンだから成り立つ。写真右のキャンディー・ジョンソンとはLAとかラスベガスのGoGoGirlの名前で歌は歌っていない。レコードでは多くの場合男のボーカルである。写真で見ると結構イロモノバンドであって、やはり日本では全然話題になったことはないと思う。しかし両者とも1960年代においてはちょっとは名前が知られていたか、あるいは廉価盤業界で良く見受けられた顔である。
私はBluesやR&Bを良く聴いているわけだが、このフィル・フラワーズ・ショウやキャンディー・ジョンソン・ショウでも2割くらいのレパートリーはBlues系であったので、昔買ったのである。これはBluesが当時はまだ孤立した音楽ではなく、エンタテイメントの一角として生き続けていた時代だったということだ。
しかし世界中を相手にしたメジャーな音楽産業はBluesを排除しつつあった。だから日本には殆ど入ってこなかった。そしてこういう廉価盤にしかないようなマイナーなタレントはもう忘れられていてCDの時代にはなかなか復活しづらい。だからそういったアーカイブの作業を続けているのだが、さて…誰が聴くのか? という気がしないでもない。
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