投稿日: Aug 08, 2015 1:23:50 AM
義父が牧師をしていたので、亡くなられた時にキリスト教の本をたくさんいただいて読んだのだが、先般また別の牧師が亡くなられ、その蔵書の一部が我が家に流れてきている。この場合は形見分けのようなものであり、本の中身とともに故人がどのようにこの本に接したのか、向かったのかというのも伝わってきて、故人の人となりを振り返ることになる。そのようなものは死後に残しても迷惑にもならないし、差し支えないかと思う。
しかし一般には遺品整理というのは残された者にとって面倒な仕事である。故人の蔵書は古本屋に行くものなのだろうが、あまり古いとか一般的ではないと、単なるゴミとして処分されてしまう。私の祖父が亡くなった場合は、戦前の本が山ほど残っていたのだが、やはりもう漢字つかいや文体が異なると文学の類は読む人がいなくてゴミになった。ただ近松全集のような特殊なものはどこかに引き取られていったように思う。これらを残す方法はないだろうか?
私は結婚の際に本の整理は大体してしまったのだが、一部屋分あるレコードが問題である。これを何らか処分しやすくしておくか、自分である程度処分しなければならない。夏になると思い出すのは記事『コミュニケーションの基本は同世代向け』に書いた中村とうよう氏のことである。彼は死ぬ直前に自分のコレクションを武蔵野美大に寄贈していて、今年も「ポピュラー音楽の世紀」といったイベントが行われていた。中村とうよう氏のように音楽評論の表だった活動のあった人は、寄贈もできるが、私のような立場ではそうもいかないので、同好の志が集まって死後のレコードの散逸が起こらないように何とかしたいねと話し合ったこともあった。
元MSJapanの古川氏が、自分の死後にタイマー仕掛けで子孫にメッセージを出すことを考えた云々、ということを書いておられたが、ある日突然面識もない曾爺さんからメールのようなものが来たらさぞかしびっくりするだろうなあと思った。しかし今後何年~何十年先にメッセージを送るシステムはあってもいいように思う。故人のための永代供養的なホスティングとかデータセンターである。
以上を整理すると遺品クラウドという次のようなものが考えられる。
0.前提としてWikipediaに項目がある程度のものであるかどうかは選別はしておいたほうが、孤児データになり難い。
1.自分の遺品で「伝えたい・残しておいてもらいたい」ものは、その主旨をネットのどこかに書いておく。
2.田舎など空間的余地のあるところに収蔵場所を作ってもらう。その費用は後述。
3.クラウドにアーカイブを作る。(1.)とリンクする。その筋の人に分類整理をしてもらえることを期待。
4.Wikipediaや専門分野のコミュニティサイトから、(3.)が参照できるようにする。
5.アーカイブは無料部分と、有料(含む寄付)部分があり、その費用で(2.)と(3.)をまかなう。
できれば(2.)は地域でテーマを決めて故人の収集品を集めて博物館化し、地域おこしにもなるようなものであるとよいと思う。大衆文化に関するものなら可能だろう。歌舞伎でも落語でもレゲエでも…
ある意味では今日はアーカイブが先行して存在しているかもしれない。例えばAmericanMemoryである。あとは行政とか国の文化政策の課題になるかと思う。